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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百十三 結人編 「言葉より確かなものを」

十二月十九日。水曜日。晴れ。




今日、絵里奈が個人懇談に行ってきてくれた。


昨日の件はもちろん絵里奈にも話したけど、学校には伝えなかった。そこまでの必要性は感じなかったから。


もしなにか学校でも影響が出てるなら情報提供という形で伝えようとは思うけど、各家庭でのプライベートな出来事まで逐一伝えてたら学校側の負担が大きくなるだろうし、少し様子を見てからというのもある。


それに何より、あの時の結人くんの姿には、少しも危険なものを感じなかったんだ。


ただただ自分のしてしまったことが悲しくて泣いてるだけの子供にしか見えなかったから。


「結人…、ごめんね、結人……」


泣きじゃくる結人くんを、鷲崎わしざきさんは何度も謝りながら抱き締めていた。


それが全てだと思う。


この時の結人くんは結局、『ごめんなさい』と口にすることはなかったものの、言葉より確かなものを受け取ったから、僕はもうそれで満足してた。


『自分のしたことを悔やんでる姿』


それ以上に雄弁な謝意はないって気がしてる。


僕は、『謝罪の言葉』というものは信じない。だって、世の中には、『口先だけの謝罪』というのがあまりにも当たり前に溢れてるから。


テレビで『謝罪会見』というのを見たりするけど、特に政治家のスキャンダルとか企業の不祥事とかでのそれからは、まったく『反省』っていうものが伝わってこないんだ。その場だけ取り繕えれば後はほとぼりが冷めるのを待てばいいという下心しか見えてこない。


それが嫌なんだ。


『謝罪』っていうのは、形だけじゃ意味がない。言葉だけじゃ意味がない。本当に反省し、同じことは二度としないっていうのが『謝罪』なんじゃないの?。


玲那がしたみたいな。


スキャンダルを起こしたタレントがテレビとかで謝罪会見しても許されないのは、『言葉だけの謝罪なんて信じない』っていう人が多いからじゃないの?。


それなのに、大人は、良くないことした子供に対して、


『ごめんなさいは!?』


とか言って、形だけでも謝らせようとするよね。


それっておかしくない?。そうやって口先だけでも謝罪させておけばOKっていうのを学ばせるから、大人になってからも口先だけの謝罪をする人が出てくるんじゃないの?。


だけど、昨日の結人くんの姿からは、そういう『形だけの謝罪』とはまるで違う、彼の気持ちそのものが伝わってきた気がするんだ。


だから僕はもう、それ以上を求めようとは思わない。


だけどその一方で、喜緑きみどりさんや秋嶋あきしまさんたちには、


「お騒がせしてすみませんでした」


と、頭を下げておいたけど。


それは本当に、騒がせてしまって申し訳ないと思ったからそうしたんだ。



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