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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百十二 結人編 「心を守るための鎧」

結人ゆうとくんはこれまできっと、大人に対抗するために、大人に舐められないようにするために、大人に隙を見せないようにするために、反抗的な仮面を被ってきたんだろうなと思う。


それはある意味、彼にとっては自分の心を守るための鎧のようなものでもあったのかもしれない。


そんな鎧が、この時、彼の中で音を立てて弾けてしまったのかもね。だから、本当に普通の子供のように泣いてしまったんだろうな。


これまで彼が耐えて耐えて耐えて耐えて耐え抜いてきたものが、とうとう限界に達してしまったんじゃないかな。


彼にとって唯一守りたいと思ってきた鷲崎わしざきさんを自分が悲しませてしまったんだってことを思い知ってしまって。


それは、本当に彼の心に刺さった『報い』だったんだっていう気がする。大人に殴られても蹴られても反省なんかしなかった、『報い』になんかならなかった彼にとっての大きな痛み。


自分がやったことで誰が悲しむことになるのかを知ってしまった彼の痛みそのものが、彼がずっと目を逸らし続けてきたものが、見ないようにしてきたものが、感じないようにしてきたものが、涙になって溢れたんだろうなって気がするんだ。


実際、この日を境に、彼の表情からは刺々しさが薄れてしまったような印象がある。


決して愛想よくなったわけでも、可愛げのある態度をするようになったわけでもないけど、彼のことをよく知る人からすると、本当に別人のように変わってしまったんじゃないかなって思うんだ。


もちろん、だからって彼の中にある危険なものがなくなったってわけじゃないとも思ってる。これからもきっと、何かのきっかけがあればそれが爆発してしまう危険性がこれからも続くんだろうな。


それでも、少なくとも今までに比べたらずっとマシにもなったんだろうけどね。


鷲崎さんの仕事も一段落して、これまでと同じように結人くんの相手ができるようになったことも、影響してるのかな。


それがどうあれ、彼にとってはきっと大きな転機になったのは間違いない。


ただ、その変化を好意的に見られなかった人たちもいるらしい。


結人くんのファンクラブの女の子たちだ。クールでどこか危険な感じもする彼のことを魅力的に思えていたのに、そういうのが薄まってしまった途端に、


『その辺にいる普通の愛想悪い男の子』


になってしまったらしくて、次々とファンをやめる子が出てきて、ファンクラブそのものが自然消滅的になくなってしまったそうなのだった。



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