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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百九 結人編 「誰が一番苦しんでるのかな?」

『殴られたことで責任を取った気になって自分が楽になりたいからかな?』


僕の言葉に、結人くんの表情がギョッとなったのが分かった。図星だったんだろうな。


よくドラマとかで、


『俺のことも殴ってくれ!。でないと気が済まない!!』


なんていうセリフを見かけたりするけど、その言葉自体が本質をバラしてる気がする。


『でないと気が済まない』なんて、完全に自分が楽になりたい、救われたいから言ってるんだよね。


だけど、<償い>とか<報い>とかは、やった方の気が済むかどうかは本当は関係ないんだろうなって思う。玲那の事件とその後の裁判とかで余計にそれを実感した。


だって玲那は、実のお父さんを刺した後に自分の喉も刺して自殺を図って、それで全てをお終いにしようとしたんだ。


裁判でも、厳しく処罰されることを望んでた。なのに実際に出た判決は、


『懲役一年六月。執行猶予三年』


という、普通から考えれば『温情判決』と言ってもいいんじゃないかなってものだった。裁判官の人達も、裁判員の人達も、ただ厳しく罰することが償いや報いになるわけじゃないっていうのを教えてくれたんだと思うんだ。


『自分の罪と向き合い、これから自分がどうなっていくことが償いになるのか、よく考えてください』


って言われたんだろうな。


僕もそう思う。殴られたりっていう『厳しい罰』を受けることで自分が救われたいっていうのは『償い』じゃなくて、あくまで『救い』なんだろうな。


でも、それじゃ意味がない。


『殴られたんだからもういいよな?』


じゃ、反省したことにはならない気がするんだ。僕は殴っただけで彼のやったことを許すつもりはないんだ。


結人くんには、自分のやったことにきちんと向き合って反省してもらいたいと思ってる。


だから言ったんだ。


「結人くんは生まれてからずっと、たくさんたくさん殴られてきたって僕は聞いてる。


だとしたら結人くんは、本当は殴られる痛みを知ってるはずだよね。殴られたら痛いっていうことを知ってるはずだよね。


じゃあもう今さら君を殴っても痛みなんか教えられるはずがないと僕は思う。僕が教える必要はないと思う。


僕が結人くんに知ってもらいたいと望むのは、自分が間違いを犯してしまった時に、誰が苦しむことになるのかっていうことだよ。


今度のことで苦しんでるのは誰かな?。


沙奈子?。ううん違う。この子は大した怪我もしなかったんだから平気だ。


沙奈子が大きな怪我をしなかったんなら僕もそんなにショックじゃない。


じゃあ、誰が一番、ショックを受けてる?。結人くんの身近な人で誰が一番苦しんでるのかな?」



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