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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百一 結人編 「内心では寂しかったんだろうな」

十二月十三日。木曜日。晴れのち曇り。




自分が作ったオムライスを、自分で鷲崎わしざきさんのところに届けに行けた沙奈子の成長にニヤニヤしつつ、それでも僕は仕事に集中した。しばらくすると完全に仕事モードに神経が切り替わり、『心のない機械』になる。


とにかく仕事をする時はそれに全力を注ぎたい。そうすることが、早く沙奈子のところに帰ることになるから。


でも、そこまでやっても残業を回避するには至らなかった。終わるのが深夜になるのを防げただけかな。それだけでも十分なのかもしれないけど。


「お風呂も入っていってもらっていいですよ」


山仁さんにはそう言ってもらえてるけど、当の沙奈子自身が、せめてお風呂は僕と一緒に入りたいらしい。山仁さんのところで入るのが恥ずかしいんじゃなく、僕と一緒に入りたいんだって。


絵里奈や玲那と一緒に暮らせてない事実から自分を慰めるのに、それを必要としてるんだ。


『お父さんと一緒にお風呂に入れるから、我慢する』


ってことなんだろうな。


だから僕も、そのためになるべく早く帰るようにする。けれど、同時に、焦ったりはしない。会社からの帰りも、安全を確かめながらゆっくりと確実に帰る。ここで事故を起こしたりしたらそれこそ沙奈子を悲しませてしまうし。それじゃ意味がない。


「ただいま」


沙奈子を迎えに山仁さんの家に寄ると、


「おかえりなさい」


大希ひろきくんと沙奈子がいつものように出迎えてくれた。さらに、


「おかえり~」


波多野さんも一緒に出迎えてくれる。


さすがに遅くなってるから、千早ちはやちゃんはもう星谷ひかりたにさんに送ってもらって家に帰ってる。田上たのうえさんも。


山仁さんは仕事中で出てこれないけど。山仁さんの方も、年末進行ってことでスケジュールが厳しいらしい。この辺りは一般的な会社勤めと似たようなものなのかな。


まあ、作家の仕事と言っても、それを依頼してくる出版社の都合に影響されるから当然なのか。


「じゃあ、また明日~」


大希くんと波多野さんに見送られて、僕と沙奈子はアパートへ帰った。


今日も、鷲崎わしざきさんの出迎えはない。それが何だか少し寂しい気もする。照れくさかったのも事実でも、内心、嬉しくもあったんだなって改めて思わされる。




ただ、この時、鷲崎さんは厳しいスケジュールの中で睡眠も削られて、そういう点でも大変だったみたいだ。だから結人ゆうとくんのこともちゃんと構ってあげられていなかったらしい。


彼女が構おうとすると『ウザい!』と言ったりもする彼だけど、だからって構ってもらえないというのも内心では寂しかったんだろうな。



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