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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百 結人編 「子供ってどんどん成長するんだなあ」

十二月十二日。水曜日。昨日の夜から降り出した雨は、朝にはやんでいた。




今日も鷲崎わしざきさんは忙しそうだ。しかも僕も定時には終われそうにないのが、昨日からもう既に分かってる状態だった。


なので、沙奈子が、


鯨井くじらいくんのご飯、作っておく……」


って、朝からパパッとオムライスを二人分作ってしまった。しかもそれを持って自分で鷲崎さんの部屋に行ってチャイムを押して、出てきた結人ゆうとくんに、


「これ…、晩ごはん……」


と言いながら渡したのを、僕は、出勤のために自転車置き場に行く途中で聞き耳を立てて察してた。


あの沙奈子が、自分から他人の家を訪ねていって、自分が作った料理を手渡したんだ。僕があらかじめメッセージを送って今から沙奈子がオムライスを届けに行くことを知らせていたにしても。


もちろんあの子が、ただ、おどおどビクビクしてるだけの子じゃなくなってるのは分かってた。大人しいように見えて、実は肝が据わってるところがあるのも分かってた。


他人に怯えて小さくなってただけのあの子はもういない。


それでも、実際にこうして自分からっていうのをできるようになってるのが確かめられたのが、嬉しかった。沙奈子の成長をすごく感じた。


『ああ…、すごいなあ……。僕も負けてられない』


そんな風にも思う。


うん、そうだ。負けてられない。久しぶりの残業に少し疲れを感じてたりもしてたけど、沙奈子の様子を見て元気をもらった気がする。


自転車に乗り込んだところで、スマホがブーンと鳴った。鷲崎さんからのメッセージだった。


「多謝!!」


と書かれた、嬉し泣きしてる女の子のイラストが表示されてた。鷲崎さんのイラストを基にした『スタンプ』ってやつだった。それを見た僕は、頬が緩むのも感じてしまう。なんだか胸があったかい。


だいぶ冬らしい寒さになってきたけど、これなら会社まで頑張れそうだとも思った。


そうして、後のことは沙奈子に任せて、僕は電動アシスト自転車に乗り、会社へと向かった。


その間にも、沙奈子の成長が嬉しくて、僕はずっとニヤニヤしてた気がする。


他人に気付かれたら、きっと変に思われただろうな。防寒の為もあってマスクをしてて良かった。


だけど会社に着いてからもどうもニヤニヤしてたみたいで、


「おはようございます」


って挨拶してきた洲律すりつさんに、


「あれ?。山下さん、何かいいことがありました?」


なんて聞かれてしまったりもした。


だから僕は、


「いえ、子供ってどんどん成長するんだなあって実感させられてしまって」


と応えさせてもらったのだった。



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