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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百九十九 結人編 「それだけで人生が決まってしまうなら」

十二月十日。月曜日。時折太陽も覗く薄曇りの一日。


仕事に集中してたからか気が付いたら一日が終わってた。




十二月十一日。火曜日。曇り。すごく寒い。防寒装備を充実しておいて本当に良かったと、自転車で通勤して思った。




それにしても、一昨日にも感じたけど、千早ちはやちゃんは本当に沙奈子にとっていい友達になってくれたな。


僕は、『親友』って言葉も好きじゃなくて、親友なんて呼べる友人なんていなかったけど、沙奈子と千早ちゃんの関係なら、『親友』って言葉を使ってもそんなに違和感がない気もする。


今はまだ子供っぽいじゃれ合いっていう面が多いとしても、これがもっと成長して深みが出てくれば、本当に『親友』って言葉に恥じない関係になれそうな予感があるんだ。


出逢いは決して好ましいものじゃなかった二人なのに、でもだからこそそれを乗り越えた時に、強い繋がりが生まれたんじゃないかな。


結人ゆうとくんにも、そういう相手が見つかってくれたらなって思う。


もちろん、沙奈子や千早ちゃんや大希ひろきくんがそうなれればとは思いつつ、沙奈子と千早ちゃんとの関わりほどは強い出逢いじゃないことが、正直、どう影響するのかなとも思ってしまうっていうのもあるかな。


とは言え、良くも悪くも劇的な出逢いをすれば結びつきが強くなるとも限らないだろうから、こればかりは僕はただ見守るしかないというのが実際のところだろうな。


第一、親が子供の『親友』を作る訳じゃないんだから、僕があれこれ考えても意味ない気もする。


ただ、今までずっと見てきて感じるんだけど、結人くんはやっぱり決して悪い子じゃないと思うんだ。


単に、生まれに恵まれなかっただけで。


でも、それだけで人生が決まってしまうなら、今の僕たちの幸せはなかったわけで、彼にもきっと幸せになれるチャンスはあるんじゃないかな。


何より彼は、鷲崎わしざきさんっていう素晴らしい人と出逢えた。それだけでも幸せになれる可能性を大きく引き寄せたんじゃないかって気もする。


彼女は素晴らしい人だ。残念ながら僕とはうまく噛み合わなかったとしても、それは決して彼女の素晴らしさを否定するようなものじゃないと思う。


それはあくまで当時の僕との相性の問題だっただけで。


そのことも今では随分とマシになった。お互いに成長できたってことなんだろうな。


彼女と出逢えた結人くんが決して幸せになれない理由なんてどこにもないと思う。彼が生きていてもいいという実感さえ与えてあげられれば、彼にとって失いたくないものを作ってあげられれば、失いたくないものを失わずに済むにはどうしたらいいのか教えてあげられれば、後は彼自身の問題じゃないかな。



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