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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百九十八 結人編 「それは黒歴史~!!」

十二月九日。日曜日。昨日の夕方から急に冷え込んできたのがさらに寒くなってた。いよいよ本格的に冬が来たってことなんだろうな。




会社の勤務については納得してるからいいんだけど、鷲崎わしざきさんの方はかなり大変みたいだ。


「ごちそうさまでした!」


すごい勢いで、千早ちはやちゃんが作ったカルボナーラをかっこんですぐに自分の部屋に戻ってしまった。


後には、気まずそうな顔をしながらカルボナーラを食べる結人ゆうとくんが残される。


それでも僕たちは、敢えて彼に、


「ゆっくり食べてていいからね」


という以上に彼に絡むことはしない。そして、食べ終わった彼が何も言わずに自分の部屋に戻っていっても、それを責めたりもしない。


「相変わらず愛想ないやつだね~」


と千早ちゃんは言ったりするけど、それも別に腹を立ててるとかそういうのじゃないのも分かってる。


「千早も前はあんな感じだったよ」


大希ひろきくんが少し苦笑いを浮かべながら言うと、


「うひ~!、それは黒歴史~!!」


って千早ちゃんが見悶えた。


でもすぐ困ったように微笑みながら、


「だから私も、鯨井くじらいのことは言えないんだよね…」


だって。


そうだ。千早ちゃんはもう分かってる。以前の自分を客観的に見ることができてる。そしてそれから学ぶことができてる。しかも過去の自分がそうだったから、結人くんのことを強く責めたりできないってことも。


「でも、その分、あいつのことはちゃんと見てるよ、私も。何か気が付いたことがあったら教えるからね」


と、星谷ひかりたにさんに向かってそう言う。自分の力だけで何とかしようとするんじゃなくてきちんと周囲と情報共有して対応しようとしてる。


本当にすごい成長だと思う。


それは結局、自分で自分のことが分かってるからなんだろうな。沙奈子にきつく当たってしまってた以前の自分を正当化しようとするんじゃなくて、でも見ないふりするんでもなくて、ただなかったことにするんじゃなくて、失敗は失敗として冷静に見られてるっていうのがすごく伝わってくる。


今の千早ちゃんなら昔のような失敗はしないだろうな。


「千早はすごいね~。自分の黒歴史と向き合えてる。これは私も負けてられないな~」


ビデオ通話の画面越しに、玲那が感心したみたいにうんうんと頷きながら言った。


僕もその通りだと思った。


「てへへ…♡」


玲那の言葉に、千早ちゃんは照れくさそうに頭を掻きながら笑ってた。


そしてそんな千早ちゃんを、沙奈子は穏やかな優しい眼差しで見守ってたのだった。



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