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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百九十五 結人編 「行き当たりばったりで」

十二月六日。木曜日。曇りのち雨。




『自分の選択がどういう結果を生むとしても、それを受け止める』


それがたぶん、子供と大人の違いの一つなんじゃないかなって今は思う。


子供は自分のしたことの結末を受け止められなくても、大人は受け止めるようにしなくちゃいけないし、それができることが『大人の条件』の一つなんだろうなって思うんだ。


もちろん、大人だからってなんでも受け止められるわけじゃないのも分かってる。だけど、受け止めようという気持ちを持って努力するくらいのことはできないと、とても『大人』とは言えない気もする。


少なくとも、僕はそうなれるように努力したい。


結人ゆうとくんのことについても。


それは同時に、鷲崎わしざきさんについても言えることなんだろうな。結人くんを引き取って一緒に暮らすことにしたっていう選択がどういう結果を招くとしても、彼女はそれを受け止めなきゃいけないんだろう。


僕も彼女も、『子供を育てている大人』として。


そうだ。自分が育てた子供がどんな人間になるか、その結果を受け止めなきゃ、育てっぱなしで後は知らないってことにもなりかねない気がするんだ。


現に、そういう親は少なくない気がする。


僕の両親がそうだった。兄が、自分の娘も捨てていくような人間に育っていたのに、ただ自分達の思い通りに育ってくれなかったことを憤るばかりで、そんな人間に育ててしまった自分たちのことはまるで見えてなかったのが分かる。


たぶん、玲那の実の両親もそうだったんじゃないかな。実の母親の葬式の最中に実の父親を包丁で刺すくらいに追い詰めておいて、裁判の時にはただただ自己弁護と泣き言を並べるだけで、自分がそうなるきっかけを作ってきたことをまるで反省してなかった気がする。


僕は、そんな風にはなりたくない。




なんてことを、年末に向けてスケジュールがタイトになってきた仕事をこなしながら考えてた。


と言うか、じっくりと考えてた訳じゃなく、仕事をしながら、頭の片隅で何となくって感じだけど。


「うお~っ、デスマーチぃぃっっ!!」


ギリギリ残業にならずに仕事を終わらせて沙奈子を迎えに行ってアパートに戻ると、そんな声が二階の部屋から漏れてきたのが分かった。


鷲崎さんの声だ。


いつもなら玲那から僕と沙奈子が帰ってくることを聞いて、部屋から出て待っててくれるぐらいなのに、それがなかった。


鷲崎さんの方も、年末に向けて大変になってきてるみたいだ。しかも今年は、ある企業から依頼された仕事が、先方の都合で何度も仕様が変更されて、その度に描き直してるらしい。


どうやら、クライアントの方が十分にコンセプトを練らないまま、行き当たりばったりで変更してるみたいなんだ。


こういうことも、時々あるんだって。



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