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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百九十四 結人編 「自分が変わったと」

十二月五日。水曜日。昨日の雨はすっかり上がって、さわやかな天気。




僕が、沙奈子と暮らした経験から学んだことを基にして、今、結人ゆうとくんに接してる。当然、そうすることが良い結果を招くと信じて。


だけどそれが本当にいい結果を招くかどうかなんて、結果が出てみないと分からないのは事実なんだ。


野球とかの試合でも、監督も選手も、もちろん勝つために、勝てる方法を選んでやってると思う。だけど実際に勝てるかどうかは、やってみないと分からない。


そして試合に負けた時、ただ負けた負けたと泣き言を口にしてるだけじゃ、きっと、次も勝てないんだろうな。


負けたという事実を受け止めて、その上で次こそ勝つためにはどうすればいいのかって考えるんだ。


もちろん、<事件>を野球の試合と同じように考えることはできないけど、いつまでもただ悔やんでるだけじゃきっと何も変わらない。


それが分かってるのに、今もウジウジと考えてしまう僕自身が許せないというのが実はあるんだ。


だからこそ、結人くんのことでは、たとえどんな結果が出てもそれを受け止めなきゃいけないと思ってる。それができないのなら、余計なことはするべきじゃないとも思ってる。


だって、沙奈子の時とは違って、関わるかどうかは僕自身が決められることだから。沙奈子の時は、僕は逃げることもできなかったから。


結人くんは、僕が扶養してるわけじゃない。彼のことは、僕が責任を負うようなことじゃない。


それは、まぎれもない事実だ。


なのに自分から関わろうとする以上は、それがどんな結果を招くとしても受け止めなきゃいけないと今は思ってる。そしてそれが『大人の責任』なんじゃないかな。


『……責任、か……』


沙奈子の時は、正直言って『たとえどんな結果が出てもそれを受け止める』なんて考え方はまったくできていなかった。ただただ沙奈子を死なせないようにってそれだけを考えてた気がする。


幸せにしてあげたいとか、大切にしてあげたいとか、『大人の責任』とか、そんなことしっかり考える余裕なんて全くなかった。とにかく必死にやってきただけだった。


それなのに僕は今、『どんな結果が出てもそれを受け止める』なんて考えることができてる。それが驚きだった。自分が変わったと確かに感じた。


『そうか……、大人だって成長できるんだ……』


よく言われることだけど、何度も聞いた話だけど、これまで僕はそれを本当に実感してたかと言えばできてなかったんだ。



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