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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百九十三 結人編 「受け止める覚悟」

十二月四日。朝にはやんでた雨が、昼頃からまた降り出して、夕方には雷まで鳴りだした。




玲那が実の両親に対して抱えていた、複雑な想い。


彼女がどんな目に遭わされてきたかを考えれば『絶対に許せない!』と思うのは当然だろうし、実際、玲那は今でも両親のことを許してなんかいない。


だけど、それでも、完全には見捨ててしまえないのが、玲那という女の子なんだ。彼女の心の本質部分は、たぶん、十歳くらいの頃で止まってしまってる。もしかしたらほんの少しずつでも成長してるかもしれなくても、やっぱり『幼い子供』のままという部分はあると思うんだ。


『どんなに虐げられても両親に甘えずにいられない幼い子供』


っていう部分がね。


ただ、それがあの事件を呼んでしまったというのも事実かもしれない。さっさとそんな酷い両親のことなんか見捨てて、実の母親の葬式も知らんぷりして放っておけば、少なくともあの事件は起こらなかった。かもしれない。


彼女の優しさこそがあの事件を招いてしまったという一面がある気は確かにする。


本当に、どうしてそんなことになってしまうんだろう……。


『優しさ』というのは、人を癒して救うものなんじゃないの?。


なんて、僕は昔から本当は信じてなかった。『優しさ』というのは実際にはほとんどの場合がただの『優柔不断』だっていうのが実際のところだと思ってた。


なのに僕は、玲那が実のお母さんのお葬式に行くのを止められなかった。


あれは決して『優しさ』じゃなかったと思う。ただの優柔不断だったんだって今では思うんだ。あの子が実の父親に会うことになるのに嫌な予感めいたものがあったハズなのに、僕は、


『行くな!、行かなくていい!』


って言えなかったんだ。それはまぎれもなくただの優柔不断だった。優しさなんかじゃない。


僕は今でもそれを悔やんでる。


……いや、本当は『止められなかった』こと以上に、その時の自分の判断を受け止め切れてない自分の不甲斐なさに腹を立ててるんだろうな。


人間だから、いつだって完璧な判断ができるわけじゃないし、失敗だってする。あの時の判断も間違いなく失敗だったと思ってる。だけど僕はその失敗をただ反省するだけじゃなく、いつまでもうじうじと後悔し続けているだけの自分が許せないっていうのもあるんだろうって気がする。


そうだ。結人ゆうとくんのことについても、今のやり方が本当に正しいのかどうかは、結果が出てみないと分からない。いい結果が出るようにと考えてやってるのは紛れもなくて、だけどそれが上手くいくかどうかは実際には分からないんだ。


僕が選択した今のやり方がどういう結果を招いてもそれを受け止める覚悟。


それこそが今の僕に必要なものなんだろうな。



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