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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百八十四 結人編 「見捨てないであげてください」

十一月二十五日。日曜日。今日も穏やかな陽気。




『なんかその恐竜って結人ゆうとくんみたいですね……』


絵里奈が口にしたその言葉は、まさに鷲崎わしざきさんも感じたものだった。


「あの恐竜、もしかして結人のことでしょうか?。山仁やまひとさんが結人をイメージしてシナリオを書いたんでしょうか…?」


鷲崎さんはそう言ったけど、僕もちらっとはそう思ったけど、でも僕がその時に一番思ったのは、


『山仁さんは、自分のことをイメージして書いたのかもしれない。それかもしかすると、死刑になったお父さんのことかも……』


ってことかな。


自分にとっては生き難い辛い世の中で追い詰められて『暴れて』しまって死刑になってしまったお父さん。


ああ、やっぱりそうなのかなって思ってしまう。


許されないことをして、そのせいで自分も苦しめられて、その挙句に死刑になってしまって、赦せないけど、憎んでいるけど、だけど心のどこかでは生まれ変わって今度こそは幸せになってほしいと願わずにはいられない複雑な気持ちが込められてるのかなって気もしたんだ。


翻って、どんなに辛くても苦しくても、それを理由に暴れていいわけじゃない。そんなことをしたら誰かが止めなくちゃいけない、たとえ痛みが伴っても。だから、暴れたりしないようにしようっていう、暴れたりしないようにしてほしいっていう想いも込められてるんじゃないかなって気もする。


その意味では、結人くんに向けられたものでもあるのかな。


いや、結人くんだけじゃなくて、今、辛い思いをしてて暴れてしまいそうになってる子供たちにも向けられてるのかも。


沙奈子が通ってる学校は、そういう子を放っておいたりしないけど、それでもかつての千早ちはやちゃんみたいに誰かを傷付けずにはいられない子もいた。彼女みたいな子たちに向けてのものでもあるのかもしれない。


だから学校側も、これを上演するのを決めたのかもしれない。


『取り返しのつかないことになる前に、相談してほしい』


ってことで。それにはもちろん、結人くんも含まれてるんだと思う。彼のことは、学校としても注視してるそうだから。


だけど、実際に辛くて苦しい状態に陥ってる子は、それを自分のことだと思えないのかも。それに気付けるくらいなら、他人に自分の苛立ちをぶつけたりしないんだろうな。


とすればこれは、そういう子の周囲の大人たちに向けられた、


『見捨てないであげてください』


っていうメッセージでもあるかも。なにしろ、保護者の人たちもたくさん見に来てたし。


と、たぶん、それらすべてを含んでるんだろうな。



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