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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百八十三 結人編 「なんかその恐竜って」

十一月二十四日。土曜日。穏やかな秋晴れ。




僕は、ただただ厳しくすればいいとはまったく思ってない。そんなのは、


『自分は厳しくされたんだからお前らも同じ目に遭え!』


っていう八つ当たりでしかないと感じてる。


だから絵本や寓話の表現がマイルドになったりハッピーエンドになったりっていうのはむしろ歓迎したいと思ってる。


でも、同時に、辛くて悲しいお話というのもきっと残り続けるだろうなっていう予感もあるんだ。だって、現実には辛くて苦しくて悲しいことが多いから。その事実があるかぎり、それを基にした辛くて悲しい話もこれからも描かれていくんじゃないかな。


大事なのは、そういうものに触れた時に、それによって感じたことをどう処理していくか、どう自分の中に落とし込んでいくかというヒントを大人が示すことだと思う。


単に、


『自力でそこから何かを学べ!』


と言って子供任せにしてるだけじゃ、もし何か好ましくない解釈をしてしまっても、それを改めることもできない気がする。現実で嫌な目に遭った時にそれについてどう対処するのかを、ヒントも与えずに放っておくのと同じだと思うんだ。


自分が嫌な目に遭った時に、理不尽で大きなストレスを受けた時に、大人がそれについての対処法のヒントを与えずに放っておいたことで良くない方向に進みかけてしまったのが、千早ちはやちゃんの例なんじゃないかな。彼女は、お母さんやお姉さんたちから受けたストレスを、大希ひろきくんに依存することで癒してもらおうとしたり、沙奈子にきつく当たることで転嫁しようとしたりしたのかもしれない。


だから、そのストレスを昇華する方法を見付けられた今では、逆に沙奈子や大希くんのいい友達になってるってことなんじゃないかな。


辛くて悲しい物語に触れるというのも、実際には現実の中で受けるストレスの一種だと思う。それを、


『ただのお話だから』


で放っておくんじゃなくて、子供がそういうのに触れたことでどんな影響を受けたのかはしっかりと見守る必要があると僕は感じた。


そして、沙奈子が通ってる学校は、今回の劇を見たことで生徒たちがどういう影響を受けたのかをきちんと見届ける体制ができてるからこそ、あれをやったんだろうな。


「は~、ホント見たかったな~」


いつものように鈴虫寺近くの喫茶店で会った時にそれについて話すと、玲那が残念そうに声を上げた。玲那はアニメとか好きだから余計にそう思ったのかも。


実は木曜日に家に帰ってから話した時にも、


「うわ~!、それは見たかった~!。くそ~っ!」


って悔しがってた。


そして絵里奈はその話を聞いて、


「なんかその恐竜って結人ゆうとくんみたいですね……」


って……。



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