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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百八十一 結人編 「これ以上暴れるようなら」

十一月二十三日。金曜日。勤労感謝の日で休日。


だから今日は、一日ゆっくり家で家族みんなで過ごそうと思う。




昨日、沙奈子の学校に、鷲崎さんと一緒に発表会を見に行った。沙奈子たち六年生の出し物は、


『クローン技術で蘇り、しかも人間の言葉が話せる知能を与えられた恐竜の子供が、世知辛い現代社会で暮らして疲れてしまう』


という、それこそ世知辛い内容だった。


沙奈子はその中で、モブのOLの一人だったけど、


「恐竜さん、大丈夫?。疲れてない?」


って、恐竜を気遣うセリフを、後ろの方で見守ってた僕にまでちゃんと聞こえるくらいにしっかりと口にしてた。大人しいけど、普段はあまりしゃべらない子だけど、必要な時にはちゃんと声が出るようになってるんだって改めて実感した。


玲那の事件の後、それこそしゃべることもままならない感じになっていたのが嘘のようだ。あの時に受けた心の傷も、完全には治ってないかもしれなくても、確実に癒えてきてるんだって分かる気がする。


そうだ。そのために僕たちは穏やかな毎日を送ることを心掛けているんだ。


そんなことを感じながら見てると、


恐竜役の子が、


「お前たち人間は、よくこんな世界で生きてられるな!?」


と、それまで我慢して我慢して大人しくしてたのがついに耐え切れなくなって凶暴な本性を現して何もかも滅茶苦茶にしようとした時、その前に立ちはだかって、


「でも、僕たち人間は、恐竜の世界じゃ生きていけないかもしれないだろ! そんなの、お互い様だよ!」


なんて言い放った子たちの中に、結人くんの姿があった。彼の声も聞こえてきた。


「結人……!」


それを見た鷲崎さんが、自分の口を手で覆いながら結人くんの名を呟いた。


とてもこういうのを真面目にやりそうにない彼がちゃんとセリフを言ってみせたことに驚いたのかもしれない。


そして、人間社会の中で苦しんで疲れ果てて爆発してしまう恐竜の姿が、彼に重なって見えてしまったというのもあるのかもしれない。しかも、そうやって暴れようとしてる恐竜を止めようとする役回りだったことが、刺さったのかもしれない。


今回の劇の原案は、実は山仁やまひとさんのものだったと後で知った。それが分かった時、僕は、あの恐竜は僕たち自身なんだって感じてしまった。


今の社会に上手く適応できなくて、疲れてしまって、そしてキレてしまう危険性をはらんだ僕たちみんなを表現してるんだって。


さらに、暴れようとする恐竜に銃を向ける自衛官の役に、大希ひろきくんと千早ちはやちゃんがいた。


「やめろ!。やめるんだ!。これ以上暴れるようなら、お前を撃たなきゃいけない!」



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