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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百七十九 結人編 「くれぐれも気を付けてください」

十一月二十一日。水曜日。気温はまた下がった気がするけど、天気は割と穏やかかな。




改めて仕事頑張らなきゃと思わされて、僕なりに気合を入れて仕事をさせてもらった。


そして明日は初めての『在宅勤務』。


と言っても、前の会社で家に仕事を持ち帰ってやったことは何度かあったから、その感じでやればいいのかなと思ったりもしてる。でも、セキュリティに関してはむしろ前の会社より厳しい気もする。


それに逆に安心しつつ、なるべく明日に回す分を減らすためにも頑張った。


おかげで、明日、ペースがつかめなくて捗らなくてもそんなに遅れずに済む程度には進めたと思う。


そして仕事を終えて帰り際、課長さんに、


「それでは、これがクラウドへのアクセスコードの入ったメモリです。重ねて申し上げますが、紛失等にはくれぐれも気を付けてください。あなたの仕事に対する姿勢としても査定に影響するということもあらかじめ申し上げておきます」


と、メモリを渡されつつ念を押された。


こんな風に言われると厳しいと感じる人もいるかもしれないけど、僕はむしろ、あらかじめ分かっていることなら、後になって『こうだった』って言われるよりもずっと気が楽かもしれない。『気をつけなきゃ』って素直に思えるし。


なあなあで済まされる方がむしろ気分が悪いかな。


受け取ったメモリを、落とさないようにチェーンでズボンに繋げた小銭入れにしっかりと仕舞った。上着のポケットとかだと上着を忘れたりした時にそのまま一緒に置き忘れることになるし、カバンとかでもそれは同じだと思ったんだ。


その点、ズボンに繋げた小銭入れは、小銭を入れる部分と小物を入れる部分がきちんと分かれてるし、ズボンに繋げてるから置き忘れることもない。後ろのポケットじゃなくて前のポケットに入れてるし、今のところは一番確実で安全だと思う。


一旦アパートに帰って自転車を置き、鞄とかも部屋に置いて、沙奈子を迎えに行く。その時にも、念の為にポケットを確認して小銭入れに触り、中にメモリの感触があるのを確かめた。


それから沙奈子を迎えに行く。


「おかえりなさい!」


「おかえり~!」


「おかえりなさい」


大希ひろきくんと千早ちはやちゃんと沙奈子がいつものように出迎えてくれた。それぞれの表情を確かめて変わりないのを確認し、ホッとする。


顔や目を見るのもそうだけど、声のトーンとかも重要な情報だ。声に張りがなかったりしたら、テンションが下がるような何かがあったか、体調が良くないしるしだからね。


でも今日はいつもと変わらない。みんな元気だ。



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