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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百七十七 結人編 「責任を負うべき部分は」

十一月十九日。月曜日。昨夜から降り出した雨は、朝にはいったんやんでたけど、その後も時々、少しだけど降ってた。




今週木曜日。沙奈子の学校で発表会がある。それを見に行くために当日は在宅勤務ということにさせてもらった。まさか就職してまだ三ヶ月しか経ってないのにそんな風にしてもらえるとは思わなかったけど、鷲崎わしざきさんに言ったら、


「たぶん大丈夫ですから申請してみてください」


って言われて、半信半疑で課長さんに申し出てみたら、


「はい。分かりました。それでは水曜日に、クラウドへのアクセスコードが入ったセキュリティ用のメモリを渡します」


とあっさり承諾してもらえた。ただし、


「ただし、メモリの管理は厳重にお願いします。万が一紛失等されましたら再発行まで謹慎していただくことになるので」


とのことだった。


働きやすい環境をと考えて作られた会社だそうだけど、そういう、締めるべきところはきっちりと締めて、ただ緩いだけじゃないんだって伝わってきて逆に安心した。


そうだ。理不尽なパワハラとかは論外でも、仕事なんだから当然のこととして責任を負うべき部分は負わなきゃいけないんだ。その辺りをちゃんとしてないような会社はきっと駄目なんだと思う。


僕は別にだらだらと締まりのない仕事をしたいわけじゃない。セキュリティもロクに考えてない会社はトラブルを招くと思う。それは困る。


そういう意味でもいい会社に入れたなと思った。


あと、鷲崎わしざきさんが結人ゆうとくんとこれまで一緒に暮らせてたのは、この会社に勤めてたからっていうのもありそうな気がする。これくらい働きやすくてしかもきちんとしてる会社に勤めてるから精神的に余裕も持てて、その分を結人くんに向けられてたっていうのもあるんじゃないかな。


仕事で精神的に追い詰められた上で結人くんの相手をするなんて、とても耐えきれそうにない気がする。僕だって、一緒に暮らしてたのが沙奈子だったからギリギリ何とか持ち堪えられた感じだったから、あの会社に勤めてて、しかも一緒に暮らしてるのが結人くんだったりしたらと思うと、ゾッとする。


今もこうしてここに住んでいられた自身もないし、もしかしたら何か事件を起こして刑務所にでも行ってたかもしれない。玲那の件があったから、より一層、具体的にそれが想像できてしまう。自分が拘置所や刑務所でどう過ごしているかまで。


そう思うと、本当に運が良かっただけなんだなって分かってしまうんだ。



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