八百七十六 結人編 「君の問題なんだから」
十一月十八日。日曜日。曇り。
昨日、絵里奈と玲那に会った時にも、結人くんのことで話をさせてもらった。
沙奈子が見た学校での結人くんの様子からして、目立ったトラブルは起こしそうにないという印象がある。
そしてそれは、大希くんや千早ちゃんの意見でもある。
「学校では本当に大人しくしてるみたいだね」
沙奈子や大希くんや千早ちゃんから聞いた話から、客観的にそう判断できると思う。
「沙奈子ちゃんたちの言うことなら信じてもいいでしょうね」
絵里奈が言う。それは僕も同意見だし、玲那も、
「だよね。だから私も学校でのことは心配してない」
とのことだった。
ただ、
「だけど、あっきーたちの正直な印象としては、『感じの悪いクソガキ』っていうのも偽らざるところみたい」
とも言ってた。秋嶋さん達から見た素直な意見だと思う。こればっかりは個人の主観だから、
『そういう見方をするな』
とは言えない。そう見えてしまうんだからどうしようもない。
でも同時に、
「だからって結人くんのことをどうこうしようっていうつもりもないんだよ。私がお願いしてるし。
『彼のことはそっとしておいてあげて』
ってさ。彼のことは、織姫と私たちに任せておいてほしいって。」
玲那がそう言ってくれてるなら、たぶん大丈夫だと思う。実際、
「玲那さんがそう言うなら」
と言ってくれてるらしいし。
そこでも、玲那と秋嶋さんたちの間に信頼関係があることが活きてきてるんじゃないかな。これがもし、玲那が信頼されてなかったら、
『そんなこと知るか!』
って反発されてた可能性もあると思うんだ。それだけ大人から見た結人くんの第一印象は良くないし。
だけど彼の背景を知ってる僕たちは、そういう表面的な印象だけで判断はしないでおこうと思ってる。玲那だって、絵里奈や香保理さんと出逢うまではすごく感じの悪い子だったらしいし。それが今ではこんなに朗らかで柔和になれたんだ。
それも結局、玲那自身の努力以上に、そうなるように導いてくれた絵里奈と香保理さんの力があると思う。
結人くんにもそういうのが必要なんだ。自分の努力だけではどうにもならないことって確かにあるんだ。僕もそれを思い知らされてきた。それを知ってる僕たちが、彼に、
『君の問題なんだから君の力だけで何とかしろ。他人を頼るな』
なんて言えないんだ。
僕も、絵里奈も、玲那も、そして沙奈子も、たくさんの助けがあったから今のようになれた。それと同じことが必要なんだと思うだけなんだ。




