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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百七十四 結人編 「彼を怪物にしてしまうかどうかは」

十一月十六日。金曜日。時折晴れ間も覗く薄曇り。




「今日、説明会行ってきました。その時に制服も申し込んでおきました。来月には学校に届くそうなので、その時にまた受け取りに行きます」


昨日、僕と沙奈子が部屋に帰ってくると、絵里奈がビデオ通話を通じてそう話してくれた。しかも、


「見本として展示されてた制服を見て、沙奈子ちゃんがそれを着てるのを想像して、なんか、改めて実感が湧いてきました。いよいよなんだなって……」


そこまで言ったところで感極まったみたいに目を潤ませた絵里奈に、


「とは言っても、まだ四ヶ月以上先の話なんだし、さすがに気が早くないかな」


と思わず言ってしまう。


すると玲那が、


「ダメだよ~、お父さ~ん。四ヶ月なんてアッという間だよ~」


って。


「そうだな…、確かにそうだ…」


玲那に言われて気が付いた。彼女に下された判決の執行猶予も、気付けばもう半分近くが過ぎたんだ。思い返してみればあっという間だった感じもする。それどころか、沙奈子がここに来てからだってあっという間だったかもしれない。なんだか本当にすごいよ。


で、沙奈子が行く中学校の説明会だったということは、当然、結人ゆうとくんにとってもそうだったわけで、もちろん鷲崎わしざきさんも説明会に行っていた。


ただ、結人くんの前であまりそういう話題を出すと彼が嫌がるかもしれないから、夕食の時にはあえて触れなかったんだ。


でも、彼がお風呂に入ってる隙に鷲崎さんがビデオ通話で加わってきて、


「結人が中学生ですよ~。これからますます難しい年頃ってことですか~?。恐ろしいですぅ~」


と、言ってるほどは怖がってる様子でもなくそんなことを言ってきた。


「あはは。でも、僕の印象だと、むしろこれからの方がどんどん良くなっていきそうな気もするけどね」


それは、正直な感想だった。相変わらず不愛想で可愛げの欠片もない態度と言えばそうなのかもしれないけど、少なくとも僕達を見る目付きそのものは、最初の頃に比べればずっと穏やかになった感じもするんだ。ただ、彼自身が、だからって態度を変えるのは嫌だ的な思いがあって、仮面を被り続けてるんだろうなっていう気もするんだ。


だけどその必要がないと彼が実感できていけば、それもだんだんマシになっていくと思うんだ。


これは決して、単なる『希望的観測』じゃない。実際に彼の様子を注意深く見ててだんだんと刺々しさが和らいでいってるのが分かるからこそのものなんだ。


彼はれっきとした人間だよ。人間の感覚を持ち合わせてない本物の怪物ってわけじゃない。


彼を怪物にしてしまうかどうかは、周囲の人間次第なんじゃないかな。



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