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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百七十三 結人編 「中学校に行くのは」

十一月十五日。木曜日。今日も雲は多いけど、穏やかな天気だと思う。




今日は、沙奈子が進学予定の中学校で入学に向けた説明会がある。


時間は四時からだったから、ちょうど絵里奈のパートが終わってからでも間に合うということで、行ってもらうことになった。


沙奈子が小学校からもらってきた資料は、この前の土曜日に会った時に渡してある。


「なんだか、ちょっと緊張しますね」


朝、僕と絵里奈は仕事に、沙奈子は学校に行く用意をしている時に、絵里奈が資料を手に少し興奮した感じで言った。


すると玲那が、


「あはは、絵里奈が入学するわけじゃないんだから、緊張したってしゃーないでしょ」


と笑う。


「それはそうなんだけどね。でもやっぱり緊張しちゃうよ。だって沙奈子ちゃんのことだもん」


苦笑いで応える絵里奈に僕も共感してしまう。


「確かにそうかもしれないけど、でも沙奈子が中学生になるんだって思うと、なんだかこう、ぐっとくるのは確かにあるよ」


言いながら視線を移すと、沙奈子も僕を見てた。


そうだ。この子が僕のところに来た時にはまだ四年生だったんだ。体も華奢で小さくて、今でも平均よりは小柄で体重も少ないかもしれなくても、間違いなくあの頃よりは背も伸びたし体つきも変わってきてるのが分かる。ちゃんと成長してるんだ。


『この子が中学校の制服を着て、中学に通うのか……』


そう思うと、込み上げてくるものがある。


「お父さん……」


自分でも目が潤んできてるのが分かるから、沙奈子にはそれこそバレバレだよな。


「沙奈子、ここまで無事に育ってくれてありがとう…」


「……うん…」


僕の言葉に、沙奈子が小さく頷く。


そんな僕たちのやり取りを見てた絵里奈と玲那も目が潤んでるのが分かった。


「だけど、まだまだこれからですよ。沙奈子ちゃんにはいっぱい幸せになってもらわなくちゃ。そのために私たちも頑張りましょう」


絵里奈が手で自分の目を拭いながら言った。玲那も「うんうん」と何度も頷いてる。


そうだ。この子は、ここに来るまでにいっぱい傷付いて苦しんで耐えてきた。それこそもう、一生分以上の苦痛を味わったんじゃないかなってくらいに辛かったはずなんだ。


僕も絵里奈も玲那も、そんな沙奈子に幸せになってもらうために集まった。だからこうしていられるのが僕たちの幸せなんだ。


「沙奈子、中学校に行くのは不安じゃない?」


僕の問い掛けに、小さく首を横に振る。


「大丈夫…。お父さんとお母さんとお姉ちゃんがいるから……。大希くんと千早もいるから……」


決して大きくも強くもない言葉だけど、不思議な力が感じられた気がした。この子の中にあるものが伝わってくる気もする。



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