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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百七十一 結人編 「無難な作品が」

十一月十三日。火曜日。薄曇りの一日。




『売り手と買い手の立場は対等』


夕食とお風呂の後で、四人での団欒の中、またちょっと困ったお客がいて大変だったという話になった時、玲那が、


「それで言うとさ」


と話を広げてきた。


「アニメとかでもさ、自分の思った通りの展開じゃなかったりするとすっごく叩く人がいたりするんだけど、私、そういうのもなんか違う気がするんだよね。何でもかんでもがさ、とにかく見てて気持ちいい、満足感のある、誰もが評価するような内容じゃなきゃいけないっていうのも違う気がするんだ。


そういうことを言うから、何かヒットしたアニメとかがあったりするとそれの焼き直しみたいなアニメとかマンガとかラノベとかが増える気がするんだよね。なんか、『なんでもいいからとにかくウケるのを作れ!』っていう圧力を感じるんだよ。そうやってやたらと難癖付けるからさ、作り手側も、無難な方へ無難な方へと走って、結局、どこかで見たような感じになっちゃう。


私、『創作』っていうのはそういうものじゃないと思うんだ。結果としては失敗だったとしても、なにか新しいものに挑戦してみるとか、万人にはウケないかもだけど、数は少ないかもしれないけど、誰かの心に刺さるものが生まれることが『創作』の醍醐味なんじゃないかって思うんだよね。


私が自転車に名前まで付けちゃうくらい今でも好きなアニメも、決してメジャーな作品じゃなかったんだ。だから秋嶋あきしまさんがそれを知っててくれたのがすごく嬉しかった。


それでいいと思うんだよ。自分の心に刺さらなかったからってバカにする必要なんかないと思うんだ。明らかに『やっちまったな~』って感じるものでも、それを『面白い』と感じる人がいたらその作品には価値があると思うんだよ。


だから私は、自分が面白いとは感じなかったアニメとかでもバカにしたりはしない。スルーするだけだよ。


でも世の中には、自分が良いと思わなかったものには価値がないと思ってやたらめったらバカにする人がいるんだよね。


だけどさ、そんなことしてたら作り手側が委縮して挑戦的なことができにくくなるんじゃないかな。そういうのって、テレビのバラエティー番組とかで無茶してるのにクレームつけたりするのと同じだと思うんだ。自分の好みに合わなかったアニメをボロクソに叩くのって、『クレーム』だと思うんだよね」


だって。


自分の好きなアニメとかの話だったからか、なんだかすごく熱く語ってた気がする。


僕にはアニメのことはよく分からないけど、やたらと攻撃したりすることで無難な作品が増えちゃうっていうのは確かにあるのかもしれないなと思ったのだった。



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