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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百六十九 結人編 「やっぱり時間はかかりますか?」

十一月十一日。日曜日。秋晴れのいい天気。




今の会社がどういう経緯で設立されたのかその一端を知ることができて、僕は何となく納得のいくものを感じてた。鷲崎わしざきさんがここに勤めてて、そして僕に勧めてくれた理由が改めて分かった気がした。


ただ、洲律すりつさんが僕に話しかけてきた一番の理由はそれを僕に教えたかったわけじゃなくて、


「ところで、沙奈子ちゃんのドレスの新作のことですけど…!」


って、やっぱりかって感じだった。


だけど彼女にとっては当然のことなんだろうな。だから僕としても、無碍にはしないでおこうと思う。自分がそんな風にされて嬉しいわけじゃないから。


「相変わらず、地道に作業を続けてますよ。焦ったりとか急いだりはしてません。そういうのはあの子に合わないんだなっていうのをすごく感じますね」


「そうですか~。やっぱり時間はかかりますか?」


「かかりますね。ただその分、あの子自身にとって納得のいくものを作ろうという意欲の表れだと僕は思ってます」


「そうですね。そういうことですよね。ごめんなさい。沙奈子ちゃんのドレスが楽しみでちょっと焦ってました」


「そんな風に言っていただけると、沙奈子自身にとっても励みになると思います。ありがとうございます」


「いえいえそんな!。こっちこそ失礼しました…!」


その言い方からしても洲律すりつさんが悪い人じゃないっていうのは伝わってくる。沙奈子の作るドレスを楽しみにしすぎて焦ってしまってる感じなんだろうな。


だから、僕が望んでないのに話しかけてくることについても、目くじらを立てないようにしようと思う。ここで、


『話しかけんなよ!』


って考えてしまうと無駄にイライラしてしまうし、イライラしてたらそれが無意識に態度に出てしまって、良くない印象を与えてしまうかもしれない。そういうことを気遣うのも、『面倒だ』『やりたくない』って思ってしまうかもしれなくても、僕としてはその手間を掛けて後々の面倒を回避することを選びたい。


何より、他人にそういう態度に出られたら僕もいい気分じゃない。


ただそうなると、


『自分がされて嫌なことじゃなかったら他人にしていいのか?』


っていう問題が出てくる気もする。正直、こんな風に気安く話しかけられるのは僕は好きじゃないけど、洲律さんにとってはきっと嫌なことじゃないんだろうな。だからこんな風に話しかけることができる。


この辺りの感覚はそれこそ人それぞれだろうから、『話しかけるな!』って押し付けるのも違う気はする。


それを上手く折り合いつけるためにも『社交辞令』を使いこなせればなって思うかな。



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