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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百六十八 結人編 「これがうちのやり方だ!」

十一月十日。土曜日。雲は多いけど晴れ間も覗く一日。少し暖かい気もする。




『自分が厳しくされててきたから同じことを他人にもする』


それを当然のことだと考える人は少なくないんだろうな。だけど自分がそれをされて嫌だと思ってきたのなら、どうして同じことができてしまうんだろう。そんな風にされて嫌だっていうのが分かってるはずなのに他人に対してできてしまうのが僕には分からない。


『そうされた時は確かに嫌だったけど、結果的に自分にとってプラスになった。だから自分と同じになれるようにしてやってるんだ』


とか思ってるんだとしたら、それが『思い上がり』ってものなんじゃないかな。


相手は自分とは違う人間だよ?。それがどうして、自分とまったく同じになれると考えるの?。


その点については、僕も沙奈子や結人くんに僕が学び取ったことを伝えて参考にしてほしいとは思ってる。だけどそれは僕の側の勝手な想いであって、無理矢理押し付けるようなものじゃないとも思ってる。自分と同じようになって欲しいのなら、『そうなりたい』と相手に思わせることが大事なんじゃないかな。


それなのに相手に『嫌なことをされた』って思われるようなことをしておいて『自分を参考にしろ!』とか言われたって、『勝手なことを言うな!』みたいに思われる気しかしないんだけどな。


強引に自分のやり方を押し付けて、それで結果的に上手くいけばいいけど、上手くいかなかった時にはどう責任を取るの?。そういう人って、上手くいかなくたって責任なんか取らないよね?。


例えば、スポーツのコーチとかトレーナーとかで選手をしごきまくるタイプは、『努力と根性!』的なことを言いながら、それでもし選手が競技生命を失うような怪我とかしたり駄目だった場合には『才能がなかった』『運が悪かった』みたいなことを言って、選手自身の責任にして自分は責任を取らないよね?。


たとえ口では、


『私の責任です』


みたいに言ってても、選手のその後の人生の面倒を見たりはしないよね。ごくたまにそこまでしてくれるコーチやトレーナーもいたりするかもしれなくても、ほとんどの場合はそんなことしないと思う。


別に、『責任を取れ!』と言ってるんじゃないんだ。駄目だった選手のその後の人生の面倒を見ろとまで言ってるんじゃないんだ。そんなことできるなんて僕も思ってない。ただ、


『その後のその人の人生まで面倒みきれないんだったら、強引に押し付けるのおかしくないかな?』


って言いたいだけなんだ。もちろんそれは、スポーツ選手に限ったことじゃなくて、会社員でもアルバイトでも同じことだよ。


『これがうちのやり方だ!』


とか強引に押し付けるのなら、それで社員やアルバイトの人が心を病んだり体を壊したら、その後の面倒を見てくれるの?。そんなわけないよね。


この会社を作った人も、きっと同じように考えたんだろうなっていうのが分かった気がしたんだ。



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