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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百六十七 結人編 「だからお前らも同じ目に」

十一月九日。金曜日。今日は久しぶりに朝から強い雨。すっきり快晴って天気もそんなに多くなかった気がするけど、この感じの雨もしばらくなかったと思う。


ただそれも、昼過ぎにはやんだかな。




出勤する時には雨が強かったから、バスで出勤することにする。だけど雨の日の満員バスっていうのはやっぱり厳しいものがあるなあ。結構強い雨だったからバスの方がまだマシかなと思ったけど。どっちもどっちっていうのを改めて実感した。蒸し暑さという点で夏よりはマシっていうだけかな。


それでも会社の居心地が良い分だけ、前の職場への通勤よりは救われてる気もする。


「もうかなりここの仕事にも慣れましたか?」


朝一の作業が一段落付いたところで洲律すりつさんが笑顔で話しかけてきてくれた。今日はまた一段と華やかなドレスだ。彼女いわく、


『こういう鬱陶しい天気の日こそ気持ちをアゲる服装をしなくちゃって気分になるんです!』


だって。なるほど。こういうのも人それぞれだから僕もなるべく気にしないようにする。それで、


「はい、なんとか。要領も掴めた気がします」


僕も笑顔で応えさせてもらった。


本当はこういうの苦手だけど、鷲崎わしざきさんが、


『山下さんは馴れ馴れしいのとしつこいのが苦手だから、手加減するように!』


とあらかじめ洲律さんたちに釘を刺してくれてるからか、思ったほどはダメージはない。本当に手加減してくれてるのかなって感じる。


こうやってお互いの距離感をちゃんと図ろうとしてくれる人が相手ならすごく助かるな。


なんてことを思ってると、洲律さんが、


「この会社って働きやすいですよね。というのも、ここの社長自身が昔、今で言うブラック企業に勤めてて心を病んで、それから何とか立ち直ってってした時に作った会社なんだそうです。だから『自分が働きたいと思う会社』っていうのがコンセプトにあって、『自分が働きたくもないような会社にはしない』って決めて運営してるって聞きました」


って。


「へえ。そういうのいいですよね。世の中には自分が嫌な目に遭ったからってそれを他人に転嫁しようっていう人もいますけど、そうじゃなくて真面目に働こうという人に働きやすい職場を自分で作ろうとするっていうのは素晴らしいと思います。


『自分は嫌な思いをした。だからお前らも同じ目に遭え』っていうのは結局、誰も幸せになれませんからね」


「そうですね。もちろんここでもクライアントから無茶な要求が来ることもあって残業が続いたりっていう時もありますけど、そういう時も『文句を言わずにやれ!』じゃなくて、『これが終わったらちゃんと休みを用意するから』って言ってくれるんです。それ以前にまず、作業を分担して一人に集中しないように工夫してくれますけど」


「それは助かりますね」



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