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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百六十六 結人編 「僕の一方的な印象でしか」

十一月八日。木曜日。晴れのち曇り。




自分が多少なりとも関わろうと、自分の意志で自分の方から関わろうとする相手の一面だけとか一部分だけを見て何かを判断するというのは、相手に対してすごく失礼だし、何より自分が損をすると思う。


だから僕はなるべくそうならないように気を付けたいと思うんだ。


もちろん、自分と関わりのあるすべての人のすべての面までちゃんと見るなんていうのは無理だから、自分の意志で自分から関わろうとする相手についてだけになるけどね。


境界としては、前の会社の上司、かな。


それについてはあくまで仕事上、自分からは関わろうと思ってないけど関わるしかない相手については、『敬して遠ざける』を徹底して、どういう人かっていうことについて最終的な判断はしない感じかな。


正直、僕にとってはすごく苦手な相手だったけど、だからと言って僕の印象だけであの人を評価するのは避けようとも思う。


それはあくまで、会社でのあの人の姿しか知らない僕の一方的な印象でしかないから。


僕の知らないところではもしかするとまったく違う一面も見せてるかもしれない。会社での姿は、あくまで仕事用の仮面かもしれない。だとしたらそれだけで『嫌な人』

と決めつけてしまうのは違う気がするんだ。


僕に見えてるのは、ただただ『僕にとっては嫌な人』という一面だけっていう可能性も高いと思う。


そんな一面だけで判断するなんて僕自身がされたくないから、僕もそんなことしないように心掛けたいと思うんだ。


沙奈子が、自分がされて嫌なことを他人にするような人になったら嫌だから。


子供を育てるというのはそういうことなんだと、僕は沙奈子から教わった。


大人だって知らないことはたくさんある。特に、結婚して子供を育てるのなんて、普通は大人になってから初めて経験することだと思う。大人でも知らないことがあって、初めてだから上手くいかないこともあって、だから失敗もするし間違うこともあるんだ。


それを忘れると、途端に思い上がった態度になるのかもしれない。


そして子供はそういうのをすごく敏感に感じ取る。


沙奈子も結人ゆうとくんも、そういうところをとてもよく見てる。


僕たち大人は、それをしっかりと心に刻んで戒めないといけない気がする。


子供を舐めてる大人は、子供からも舐められる。


今まさに結人くんがそれを僕に教えてくれてる。


『生意気で可愛げのない、礼儀知らずな子供』


一見するとそう見える彼は、大人をとてもよく観察してる。僕のことを無視してるように思えて油断なく様子を窺ってる。


そんな彼に、身勝手なだけの大人の姿を見せないようにと思うんだ。



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