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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百六十五 結人編 「愛し続けられるように」

十一月七日。水曜日。雲は多いけど一応晴れてるのかな。




僕と絵里奈は、


『沙奈子を守りたい』


という点で考えが一致したから結婚したというのは事実だ。それは他人からは打算に見えるかもしれないけど、そういう部分のしっかりと一致してるからこういうふうに離れ離れで暮らしてても、気持ちが揺らがないでいられてるっていうのもある気がする。


これがただ単に、『一緒にいたい』っていうだけで結婚していたら、


『せっかく結婚したのに一緒に暮らせてない!』


ってことが不満になってしまって上手くいかなくなるかもしれない。


だけど僕と絵里奈の場合は、『沙奈子を守りたい』っていう点で一致してるから、今は敢えて別々に暮らすことが沙奈子を守ることに繋がるって考えられるからこそこうしてられるんだ。


僕たちが結婚に踏み切った一番の理由に反してないから、今の状況を受け止めることができてるのかも。


『結婚』ってそういうものなんだなって実感した。あやふやな『ただ一緒にいたい』という気持ちだけでは続けるのは難しいんだろうなって。


だって、人の心は変わるから。


どんなに、


『好きだ!、愛してる!』


って言ってても、それがずっと続くことの方がむしろ少数派だと思うから。


その気持ちが冷めた後でもなお共通の目的とか、『二人一緒でないとできない何か』を一緒に成し遂げていこうっていうのがあると続くのかもしれないな。


外国だと『結婚は契約』って考えるところもあるらしいけど、それは言い得て妙って気もする。


人が長く一緒に暮らすのって、簡単なことじゃないんだろうな。


そういう点からも、図らずも僕たちはすごく噛み合ってると思う。


もちろん、絵里奈のことは好きだ。愛してる。絵里奈も僕を愛してると言ってくれてる。だけどその上で、明確な『共通の目的』があるんだ。


『沙奈子を守って、みんなで幸せに暮らしていける家庭を作る』


っていうさ。


これは綺麗事とかじゃなくて、もっと合理的で、打算的で、具体的な話なんだ。


結婚に夢を見るのはいいと思う。それは個人の自由なんじゃないかな。


ただ、結婚が上手くいかない例も現実にある以上は、それがどうして上手くいかないのか、具体的に、夢見てるだけじゃない、いつもは目を逸らして見ないようにしてる部分も見なきゃいけないんだろうなって、最近は特に思うんだ。


せっかく結婚したのにこうやって別々に暮らしながらも僕たちは今でもまだちゃんと『家族』でいられてる。それが何故なのかをきちんと知ることで、これから先も、もし何かがあっても、ちゃんと家族でいられるように考えることができると思うんだ。


僕は絵里奈を愛してる。


だからこそ、愛し続けられるようにちゃんと考え続けていたいんだ。



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