八百五十八 結人編 「自分は完璧じゃないクセに」
十月三十一日。水曜日。曇り時々晴れ。
以前にも言ったかもしれないけど、子供って『狡賢い』んだ。頭ごなしに大人に叱られたって、『そんなことするな!』って言われたって、実は反省なんかしないでただ大人の目を盗んで同じことをするようになるだけ、っていうことも多い気がする。
もちろん、その場で本当に反省してやらなくなる子も中にはいると思う。だけど決して全員がそうなる訳じゃない。
そして多くの場合、大人は、そうならなかった場合に、それを『子供自身のせいだ!』って言う。
でも、本当にそうなの?。
子供にも納得できる諭し方をできなかった大人の側に責任はないの?。本当にないって言いきれるの?。『大人の側に責任はない!』って言い切る人は、自分が信号無視とか駐車違反とかした時に、マナー違反とかした時に、それを誰かに注意されて、でも納得できなかったら、自分が納得できるような諭し方ができなかったその相手に責任があるって考えたりしないの?。
信号無視とか駐車違反とかマナー違反とかした時に誰かに注意とかされたら、
『そんな細かいことをいちいち煩く言うなよ!』
って逆ギレする人の方がすごく多い気がするけど?。
それか、その場では反省してるように見せてても、すぐまた同じことをする人とかすごく多い気がするよ?。
特に、信号無視とか駐車違反とか、注意されたり切符切られたりしても、それで二度としなくなる人の方が少ないっていう印象しかないけど?。本当にその場で反省してるのなら、二度とやらなくなるんじゃないの?。
でも、実際にはそうじゃないよね。
大人がそんなことをしてるのに、注意されても反省しないのに、子供には、
『一回注意されただけで反省しろ!。反省しないのならそれは子供自身の責任だ!』
って言うの?。自分は一回注意されただけじゃ反省しないことがあるのに?。ネットとかでもマナー違反を注意されて一回で反省する人なんて、むしろ滅多にいないんじゃないの?。
今から思い返してみれば、子供の頃の僕も、大人のそういういい加減な部分を見透かして馬鹿にして、だから大人なんて信用も信頼もしてなかったのが分かるんだ。
だからこそ自分が大人になった今、大人のそういういい加減でダメな部分を反省したいと思う。
だけど同時に、反省しても、反面教師にしても、それでも『完璧な人』とか『聖人君子』になれない自分を理解して、子供にも完璧を求めないようにしようと思うんだ。
自分は完璧じゃないクセに、相手には完璧を求めるなんて、身勝手以外の何ものでもないと思うし。
それを思うから、僕は、沙奈子だけじゃなく、結人くんに対しても完璧を求めない。千早ちゃんに対しても求めなかった。一回ですぐに反省して『いい子』になることを求めなかった。自分の間違いを認めて反省するのって、時間がかかるからね。
時間を掛けて見守るのが大事なんだって、今は思うんだ。




