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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百五十七 結人編 「制御できない『怪物』を」

十月三十日。火曜日。曇り時々晴れ。




結人ゆうとくんがネットで、悲惨な事故現場とか事件現場とかの画像をチェックしてるのは、以前から分かってた。


鷲崎わしざきさんも、それについて何度も『そういうの見るのやめなさい!』って叱ったらしい。


だけど彼はその度に、


「うるせー、おデブ!」


って言って聞く耳を持たなかったそうだ。


『あんな画像とか見てて大丈夫かな……』


と鷲崎さんは心配してたけど、僕は、結人くんが何を求めてそれを見てるのか、ううん、僕自身がそういうのを見るとしたらそこに何を求めるのかって考えることはできた。


たぶん、自分より不幸な人の様子を見て、慰められたいんだ。


『これに比べたら自分はまだマシ』


って思いたくてそれを見る気がする。


結人くんがそうだとはもちろん限らないけど、少なくとも今は、そんな画像を見ながらニヤニヤ笑ったり、嘲ったりしてないのは事実だった。


だから本音を言わせてもらえればそんなのは見ない方がいいと思うけど、彼が精神的なバランスを取るために見ているんだとしたら、無理にやめさせたって逆効果なような気がする。


そういう訳で、敢えて煩いことは言わないようにしてた。


でもそれと同時に、画像を見てる時の彼の様子を、注意深く見守るんだ。喜んでたり、興奮してる様子が見えると危険かなと思いつつ。


でも、今の彼はそうじゃない。ただ黙って静かに画像を見てるだけだった。


こういうのも他人から見たら『甘やかし』に見えるかもだけど、頭ごなしに『やめろ!』と言ってスマホを取り上げても、その先でどうするつもりなのか、僕にはさっぱり分からない。とにかく自分の思ってる通りになることを期待して、そうならなかったら相手の所為にして、問題を余計に拗らせる未来しか見えないんだ。


もし仮にその場では反省してる様子を見せてても、そんなのは何の保証もないその場限りの『誤魔化し』でしかないと僕は思う。実際、僕ならきっとそうする。反省して殊勝なフリを見せてても腹の中では舌を出して、大人の目の届かないところでやっぱりそういう画像を見るんだ。


そうして自分の中に、制御できない『怪物』を育てていく。


それじゃ意味がない。


だったら自分の目の届くところで好きにしてもらって、その時の様子を注意深く見守って、エスカレートしそうだなって感じた時に確実に釘をさすことの方が効果的じゃないのかな。少なくとも僕自身はそうされた方がやりにくい気がする。


大人にとって都合の良い『品行方正な子供』なんて、僕はむしろ不気味なだけだと感じてる。その『良い子の仮面』の裏で何を考えてるか分からないからね。


子供の頃の僕のように、ね。



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