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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百五十六 結人編 「何を求めて見るかな」

十月二十九日。月曜日。曇りのち晴れ。




『目標や目的に到達するための手段や通過点として大学に通う』


なるほど言われてみたらそうだって思った。何のために大学に行くのかさえ分からずに大学に通ってたのは、僕の周りにもたくさんいた。


それか、大学に行くことそのものが目的になってしまってて、入学した途端に遊び惚けて、何をしに行ってるの分からないっていう人が。


問題を起こすサークルとかも、そういう人が多く集まってるのかもしれない。


だって、本気で勉強するために行ってるなら、そんなことをしてる暇もないと思うし。


昨日、鷲崎わしざきさんはこうも言ってた。


「私も結人ゆうとを大学までは行かせてあげたいと思ってましたけど、それって私の一方的な願望なんでしょうね。大学に行って何かやりたいことがある、学びたいことがあると結人が思ってくれたら行ったらいいだけで、私が行かせるんじゃ意味がないって思いました。


本当、自分が何も考えてなかったんだなって思い知らされます」


それは、僕にとっても耳の痛い言葉だった。沙奈子を大学までは行かせてあげたいと思っていたけど、沙奈子自身が本当にそれを望んでいるのかどうか考えられていたかと言えば自身がない。本人のやりたいようにすればいいとは思ってても、『大学くらいは行くのが当然』って考えていなかったかと言われたら自信がない。あの子が大学に行って何を学ぶのか、そもそもあの子が大学に行ってまで何を学びたいと思ってるのか、考えてあげられてたのかなって。


もちろん、まだ小学生だから沙奈子自身がそこまで考えてないかもしれないけど、いずれそういうことを考えて進学するかどうかを決めるって形では、僕は心構えができてなかったかもしれない。


こういうのも、他人から学ぶってことなんだろうな。


自分が気付いてなかったことを気付かせてくれるって。


僕たちがそういう話をしてる間、結人ゆうとくんは興味なさそうにスマホでネットを見てるみたいだった。禁止したってどうせいずれはネットをするようになるのは分かってたから、隠れてそういうのをするくらいならと、鷲崎さんがリサイクルショップで中古のスマホを買ってきて持たせてた。電話契約してないから、Wi-Fiがあるところでないと使えないやつだ。


彼がもし、ネットで誰かを攻撃するようなことをしてたら、たぶん、その表情で分かると思う。彼も沙奈子と同じで、態度に出るから。


だけど今、スマホでネットを見てる彼は、すごく落ち着いてた。ちらっと見えた画面にはどうやら事故現場とかの画像が映し出されてるみたいだった。


彼がそういうのを見て何を思っているのかは分からない。


ただ、自分がそういうのを見るとしたら何を求めて見るかなとは、想像できてしまうかな。



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