八百四十七 結人編 「一緒に楽しめるようになったのは」
絵里奈や玲那と出逢えたことに感謝する機会という形でも、誕生日を祝うというのは、僕にとっては意味がある気がする。
いつものカラオケボックスに行くと、星谷さんたちが既に店の前で待っていた。
「こんにちは。今日はありがとうございます」
毎度のことながら誕生日パーティーのセッティングをしてくれることには感謝の気持ちが止まらない。
でも、星谷さんは、
「いえいえ。私自身の楽しみのためにしてることですから。お気になさらずに」
って平然としてる。
確かに彼女にとっては大希くんと一緒に楽しむためのちょうどいい口実でもあるから、そういう機会を与えられていることでいくらかは恩も返せてるのかもしれないな。
そうこうしてる間に、
「やほ~♡」
と、イヤホンから玲那の声が聞こえてきた。バス停がある方に視線を向けると、手を振りながら絵里奈と玲那がこっちに向かって歩いてくるのが見えた。
「やほ~!、玲那さ~ん♡」
千早ちゃんと波多野さんが声を揃えて手を振り返す。この二人も玲那とすごく気が合うみたいだ。絵里奈とは、星谷さんと田上さんが気が合うらしい。
大希くんは玲那に遊んでもらってることが多いかな。その様子は姉弟って感じもする。
なんだか、本当に僕たちは全員が家族みたいだ。山仁さんを『お父さん』とした家族ってことかな。
でもそうなると、大希くんは山仁さんの息子だから、沙奈子は孫ってことになって、同じ歳の叔父と姪ってことになってしまうな。面白い。
改めて思う。イチコさんと大希くんと星谷さんを除くと、全員、『本当の家族には恵まれなかった』っていう共通点があるんだなって。
それでも、本当の家族には恵まれなかったとしても、こうして家族同然の集まりが得られたことでそれを補ってるんだな。
なんて感慨を抱きつつ、みんなでカラオケボックスのパーティールームに入って、
「うお~っ!、いくぞ~!!」
玲那のスマホに繋いだスピーカーから聞こえる彼女の掛け声で、絵里奈と玲那の誕生日パーティーが始まった。
「イエ~っ♡」
千早ちゃんと波多野さんと田上さんが陽気に声を上げて盛り上げてくれる。
沙奈子も、さすがに慣れてきたみたいで、カラオケボックスでの賑やかな時間を最後まで付き合えるようになってきていた。
「大丈夫?。疲れてない?」
と僕が聞いても、
「大丈夫」
って応えるようになったんだ。
決して無理はしてほしくないけど、こうやって一緒に楽しめるようになったのは素直に喜べばいいのかもしれない。




