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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百四十二 結人編 「彼なりに誠意は見せてくれてる」

十月十六日。火曜日。薄曇りの一日。


今日は絵里奈と玲那の誕生日。仕事が終わって沙奈子を迎えに行って帰ると、すぐ、鷲崎わしざきさんからビデオ通話が届いた。


「今日は絵里奈さんと玲那さんの誕生日ですよね。今からお祝いしてもいいですか?」


だって。お祝いと言っても、絵里奈と玲那はビデオ通話での参加になるけどね。


今度の土曜日に星谷ひかりたにさんたちも一緒にいつものカラオケボックスでパーティを予定してるんだけど、鷲崎さんはそっちには参加できないからね。結人くんがまだそこまでは打ち解けられてないから。


それでも、絵里奈と玲那の誕生日を祝う為に僕たちの部屋に来た鷲崎さんと一緒に、不愛想な顔をしながらも結人くんも来てくれた。


「誕生日、おめでと~」


と、僕がビデオ通話画面に向かって掛け声を掛けると、


「おめでたくな~い!」


って玲那が笑顔で応える。確かに、女性にとってはもうあまり嬉しくないんだろうな。だけどそうやって言い合うのが僕たちのレクリエーションだから、深い意味はないんだ。


向こうは絵里奈が買ってきた小さなショートケーキ。こっちは鷲崎さんが買ってきてくれたお寿司とショートケーキでお祝いする。


肝心の絵里奈と玲那は食べられないけど、それは、今度の土曜日にまた星谷ひかりたにさんたちと一緒に誕生日パーティーをする時に『差し入れ』という形で用意してくれることに。


「ごめんなさい。二度手間になってしまって」


ビデオ通話の画面の向こうで絵里奈が深々と頭を下げる。


すると鷲崎さんも、


「いえいえ!、結人のことでお世話になりっぱなしなんですから、このくらいじゃお返しにもならないです!」


と頭を下げた。


大人たちがそんな風にしてる間も、結人くんはやっぱり顔を背けて不機嫌そうなフリをしてた。


そう。それは、ただのフリなんだ。大人を信用できない彼が自分を守るために取ってるポーズなんだ。


沙奈子が穏やかな表情をしてるのがその何よりの証拠かな。本気でイライラしてたらそういうことに敏感な沙奈子が不安そうな表情になるからすぐに分かる。教えてくれる。


だから僕たちは結人くんに対してイライラしないで済んでる。


『この恩知らず!』


みたいなことを言わずに済んでる。


だって愛想よくしてなくてもこうやってこの部屋に来てくれるというのは、彼にとっての最大限の譲歩だから。彼がそうやって譲歩してくれてることを、僕は正当に評価したいんだ。


誰にでも分かりやすい態度じゃなくても、彼なりに誠意は見せてくれてる。まだ子供で、人生経験の少ない彼が上手くできなくてもそれは当然なんだ。今まさに学んでる最中なんだから。


他の誰が理解してくれなくても、彼のことを知っている僕たちはそれを認めたいんだ。



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