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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百四十一 結人編 「楽しみながら宿題ができる」

十月十五日。月曜日。なかなか秋晴れとはいかない。一時的に雨も降ってた。




今月二十七日の土曜日に、沙奈子の学校の運動会がある。小学校最後の運動会だ。だから、それまでの間、毎日運動会の練習がある。


決して運動が得意な子じゃないけど、沙奈子も嫌がる風でもなく、練習に参加してるみたいだ。一番張り切ってるのはやっぱり千早ちはやちゃんかな。勉強よりは運動の方が得意だからっていうのもあるみたいだけど。


でも、だからって勉強ができないかって言うと、沙奈子や大希ひろきくんに比べればっていうだけで、テストの点数だって決してひどくはないみたいだ。それこそ、沙奈子たちと友達になる以前のことを思えば、まるで別人のようにできるようになってるって。


それは結局、沙奈子や大希くんと一緒に毎日、宿題という形で勉強ができてるからなんだろうな。


沙奈子の学校では、前にも言った気がするけど、『家庭で勉強をする習慣を身に付ける』ことを目的にして宿題を出すらしい。だから基本的には学校で宿題をして帰るっていうのは認められてないんだって。


とは言え、家で宿題をしてこなかった場合は、放課後に居残りでやらされるから、


『じゃあ、家でやらなくてもどうせ学校でやらされるんだからそこでやればいいじゃん』


的な発想で、宿題をわざとやらない子もいるみたいだ。そしてそういう子の一人が、かつての千早ちゃんだった。


学校としてはそれじゃ意味がないから、何とか家でするように指導するのに苦労してたみたいだ。


だけど、千早ちゃんの場合は、家こそが勉強なんてできるような環境じゃなかったのもある。


何かといえば意地悪をしてくるお姉さんたちがいて、宿題どころじゃなかったんだ。


それが今では、大希くんの家で、楽しみながら宿題ができるおかげもあって、ぜんぜん嫌じゃなくなったって。


結人くんも、沙奈子と一緒に勉強することで何となくそれが苦痛じゃなくなってきてるらしい。


鷲崎わしざきさんも彼に勉強とか宿題とかやってもらおうとあれこれ言ったりもしたけど、それは彼には合わなかったみたいで、上手くいかなかったって。


「私が何度言ってもやらなかったのに…。凹みます……」


だから僕は言ったんだ。


「こういうのも向き不向きがあるんだと思う。それに結人くんはどうしても大人に対する不信感があるだろうし」


って。


鷲崎さんの場合は、在宅で仕事をしてることもあって、一緒にはいるけどずっとかまってあげることもできないんだ。沙奈子がやってるみたいに『一緒に勉強』っていうのも、意外とタイミングが合わないらしいし。


でも、だからこその沙奈子の存在なんだと思う。できないことはお互いに補い合えばいいんじゃないかな。



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