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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百四十 結人編 「一生、消えないんだと思う」

十月十四日。日曜日。スッキリ快晴とは言えない天気。




「やっふ~、沙奈~!」


すっかり習慣になった、沙奈子と結人ゆうとくんの午前の勉強が終わる頃、いつものように千早ちはやちゃんが、星谷ひかりたにさん、大希ひろきくんと一緒にやってきた。


そう言えば星谷ひかりたにさんはそろそろ受験が本格的になってるはずなのに、まるでそういうのを感じさせない余裕があった。


沙奈子、千早ちゃん、大希くんがお昼の用意をしてる時、ちょっと尋ねてみる。


「星谷さんは、受験とか大丈夫なんですか?」


すると彼女は落ち着いた様子で、


「はい。その辺りは抜かりありません。試験というのはパズルゲームのようなものですし、学校の授業で出てくる範囲をきちんと理解していれば、後は凡ミスに気を付けるだけで問題ないのです」


だって。


いや、その『学校の授業で出てくる範囲をきちんと理解していれば』というのが結構難しいと思うんだけど……。


できる人っていうのはそもそもその辺りからして違うんだろうなっていうのを感じてしまった。でも、その時、


「……?」


結人くんが星谷さんを睨み付けるようにして見てることに気付いて、ギョッとなる。これはいったい、どういう意味なんだろう……?。


だけど星谷さんはそんな結人くんの視線に気付きながらも、平然と受け流していた。彼女にとっては結人くんのそういう態度すらどうってことのないものなんだっていうのが分かってしまう。


ただ、結人くん自身、そういうふうに他人を見るのが原因で平和記念公園での一件に結び付いたんだから気を付けた方がいいのになとは思ってしまった。


とは言え、そんなことがあったからってスイッチを切り替えるように変わってしまうわけじゃないのが人間なんだろうな。それに、僕から見ると挑発的に睨み付けてるように見えても、彼自身はそんなつもりないのかもしれないし。自分でも意識しないうちにそういう風に他人を睨み付けることが癖になってしまってるのかもしれない。


彼にとっては、今でも、鷲崎わしざきさん以外の人は、決して信用しちゃいけない敵なんだろうから。


……本当に、罪深いな……。


彼が鷲崎さんと出逢うまでの六年間に周囲の大人からされてきたことが、さらに六年経ってもいまだに尾を引いてるんだ。


そういう経験をしたことがない人は、


『いつまで過去を引きずってるんだ!』


みたいに言うかもしれないけど、沙奈子が平和記念公園でフラッシュバックを起こしたように、そういうのって、たぶん、一生、消えないんだと思う。


だから沙奈子も、結人くんも、玲那も、千早ちゃんも、ずっと、自分の過去と向き合っていかないといけないんだろうな……。



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