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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百三十七 結人編 「そういうことを謝るっていうのは」

今日は、鷲崎わしざきさんと結人ゆうとくんも、自分の部屋で晩ごはんにする。あらかじめそう決めてたんだ。


「お互いゆっくり、沙奈子や結人くんと話をしよう」


ってことで。


沙奈子は、修学旅行中に見聞きしたことを、端的に、ぽつりぽつりという感じで話してくれた。だけどその時は、平和記念公園で起こったっていう『事件』のことは話さなかった。だから絵里奈も玲那も、無理に聞き出そうとしなかった。


でも、寝る時、僕と一緒に布団に入って横になって、僕の胸に顔を埋めた沙奈子が、


「お父さん…、あのね……」


って話し始めてくれた。


「中学生の人たちが、鯨井くじらいくんのグループに絡んできて、それで鯨井くんが女の子たちを守ろうとしてケンカになって…。私と千早ちはやちゃんと大希ひろきくんとが駆け付けたけど止められなくて…。そしたら、中学生の人たちの先生が来て止めてくれて。


わたし、転んじゃったけど、怪我とかは擦りむいただけで大丈夫で、もう痛くない……。


お父さん……。鯨井くんは悪くないよ……。女の子たちを守ろうとしただけだよ……」


静かに語る沙奈子の言葉に、僕はただ耳を傾けた。そして、彼女が一通り話し終えたのを確認してから、言ったんだ。


「そうか……。分かった。沙奈子がそう言うんだったら、お父さんもそれでいいと思う。ちゃんと話してくれて、ありがとう……」


「…うん……」




その後、星谷ひかりたにさんが、千早ちゃんと大希くんからも詳しい事情を聞いて要点を整理した話を教えてくれた。それによると、沙奈子の言ったことでほぼその通りだったんだけど、唯一、沙奈子が転んだ原因が、中学生に突き飛ばされて転んだ結人くんに駆け寄った時に、立ち上がって中学生に向かっていこうとした結人くんに突き飛ばされたっていうことと、この時の暴力的な空気の所為か沙奈子がフラッシュバックを起こしたことについては、彼女は話してくれていなかったのが分かった。


だけど、それを聞いても、僕は、沙奈子に改めて問い詰めるようなことはしなかった。あの子が話さなくていいと判断したのなら、それを尊重したいと思ったんだ。実際、千早ちゃんと大希くんのおかげでフラッシュバックもすぐに収まったそうだし、結人くんに突き飛ばされた件にしても、わざとと言うよりはたまたま彼が立ち上がった時に邪魔になってしまったのが原因らしいし。


それに何より、結人くん自身が後でそのことを沙奈子に謝ってくれたらしいし。


今の彼が、そういうことを謝るっていうのは、すごく勇気の要ったことだと思う。それをしてくれたのなら、僕はもう、彼を責める気にはなれないんだ。



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