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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百三十一 結人編 「もっとこうしたらいいのに」

十月八日。月曜日。今日は『体育の日』なのか。快晴に恵まれて良かったけど、でもこの『体育の日』に運動会とかするところって意外と少ない気がする。するとしたら日曜日なんじゃないかな。


沙奈子の学校でも、今月の終盤の日曜日が運動会の予定だし。


その前に明日からは修学旅行だ。二泊三日で広島に行く。臨海学校とかに行く時も使った大きなリュックに必要なものを詰めて、準備は万端だ。


「紐を調節するから、ちょっと背負ってみて」


最後に、そう声を掛けると、「うん」と頷いてリュックを背負ってくれた。でも、少し窮屈そうにしてる気がする。


「やっぱり紐が短くなってきてるのかな」


そう言いながら僕は紐の長さを調節した。その時にふと気付いて、


「ごめん、ちょっと後ろを向いてくれるかな」


と声を掛けると「こう…?」と言いながら僕の方にリュックを向けてくれた。するとよく分かったんだ。初めてこのリュックを使った時には、まるでリュックから頭と足が生えてるみたいにも見えたのが、ちゃんと人が背負ってるって見えるようになってきてるってことが。


『沙奈子も大きくなったんだな……』


きっと、こういう時にも子供の成長って実感するんだろうなって思った。なんだか途端に胸の中でぐうって湧きあがるものがあった。


『良かった……、無事にここまで育ってくれて、本当に良かった……』


なんて、目頭が熱くなる。


『いろいろあったけど、それでも本当に取り返しのつかない失敗はせずにこれたんだな……』


児童相談所でのこととか、玲那の事件を防げなかったとか、後悔せずにいられない『失敗』は何度もしてきた。だけど、今、こうしていられるというのは、ギリギリのところで踏み止まってこれたからなんだろうなって気がするんだ。


もちろんそれは、たくさんの人に支えてもらえたからっていうのもあると思う。僕はそれを忘れないようにしたい。僕がそれを示すのが、沙奈子に対する『手本』になるんじゃないかな。


あれこれ口煩く言ったって、通じない時には通じないし、言えば言うほど反発を招くことだってある。


それは、他人に対しても同じじゃないかな。


僕から見て『ああ、もっとこうしたらいいのに…!』と感じてしまうことがあったとしても、だからってあれこれ干渉すれば、


他人ひとんちのやり方に口出しするな!』


って反発されるのがオチだと思うんだ。


ドラマとかではそういうお節介も上手くいったりするかもしれないけど、正直、なぜそれが上手くいったのかをちゃんと説明してくれてるものを見たことがない。だけど、何となく『そうかな』と思うものはあった気がする。



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