八百二十八 結人編 「果たして誰の気持ちが」
ドラマとかでは、とにかく、
『やってみたらなんだか上手くいきました!』
的な展開ばかりで、
『誠心誠意、真心を込めて接すれば必ず道は開ける』
的な理屈で押し通して、それで何故かよく分からないけど上手くいきましたって感じばかりのような気がするんだ。
もちろんそれは、決められた時間内に収めないといけないという理由もあってそこまで微に入り細に入り描写できないっていう理由もあるんだろうと思う。あくまで見ていて面白いということを重視した演出だから長々と説明したらテンポが悪くなるという事情もあるんだろうと思う。それを批判したい訳じゃないんだ。
ただ僕には、納得できないというだけで。
だから僕は、ドラマとか見ない。そして、ドラマとかで描かれる部分だけを真に受けた人に、『ああしろこうしろ』とお節介なことをされても素直に話を聞く気にはならない。
だってそれ、
『ドラマの真似をして他人にお節介を焼いてる自分が好き』
なだけにしか見えないから。
そして、そんな風に言ったら、
『他人の親切をそんな受け取り方するのが悪い!』
って言う人が必ずいるけど、その態度がもう、言われる方の気持ちをまるで考えてない、つまり『相手の気持ちなんて何も考えてない』っていう証拠そのものにしか思えないんだ。
『お節介を焼きたい側の気持ちしか考えてない』っていうね。
そんなので本当に上手くいくとでも思ってるの?。
そんなことを考えてる人が親切の押し売りをして、本当に相手が喜ぶとでも思ってるの?。
だとしたら、人の気持ちなんて分かってなさ過ぎだと思うんだ。
『他人の気持ちが分かる』なんて軽々しく言う人は信用できない。
僕は、他人の気持ちなんて分からない。沙奈子や、絵里奈や、玲那の気持ちだって完璧に分かってるかと言ったらそんなことないと思う。だって、玲那の気持ちが完全に分かってたのなら、大雪のあの日、彼女を行かせたりしなかったはずだから。
他人の気持ちなんて分からないけど、分かりたいという気持ちはある。完璧ではなくても、ある程度までは分かろうと努力したいと思ってる。
特に、沙奈子や、絵里奈や、玲那の気持ちは。
その上で、できることなら、鷲崎さんや結人くんや星谷さんや千早ちゃんや山仁さんやイチコさんや大希くんや波多野さんや田上さんの気持ちも。分からなくても、『分からない』と承知した上で『分かりたい』と思うことが大切なような気がする。
相手の気持ちが『分かった』と思っちゃダメなんだって気がするんだ。何より僕自身が、他人に『気持ちが分かる』なんて言われたくないと思ってるから。
そうだよ。本当に他人の気持ちが分かるなら、その人が望んでないことを言ったりしたりするわけがない。
だけど現実には、他人が望んでないことを言ったりしたりする人の方が圧倒的に多い。
そしてそういうことをする人の多くが、『気持ちは分かる』とか言ったりするんじゃないかな。
果たして誰の気持ちが分かると言ってるのか、僕にはまるで分らないけど。




