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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百二十六 結人編 「ああしろこうしろと口出しして」

十月四日。木曜日。昨夜から降り出した雨は、僕が出勤する頃にはいったんやんでたけど、仕事を始めてしばらくするとまた降り出した。




「そうか…、学校からの呼び出しがないってことは、結人ゆうともちゃんとできてるってことですよね」


昨日、鷲崎わしざきさんは最後にはそう言って納得できたみたいだった。


以前、『結人の態度が変わった気がしない』と言ってたことについても、『一見して分かりやすい変化がないという部分だけを見てダメだと短絡的に判断するんじゃなく、総合的な、相対的な判断を冷静に行う』っていうことで納得できたって。


問題というのは、ただ我慢するとか耐えるとか時間が解決してくれるとか、目を逸らしてるうちに解決してくれるというものじゃないと思う。精神論なんて、僕にとって現実を見ないようにするための『逃げ』としか思えない。


『自分はこんなに我慢して耐えてるんだから、上手くいってよ!』


と、自分が目を瞑ってるうちに誰かが解決してくれるのを期待するだけの『甘え』としか思えないんだ。


きちんと具体的な対処もしないで『いつか分かってくれる』なんて期待するのは、子供のすることなんじゃないかな。大人のすることとは思えない。


だからって、そういうことで悩んでる人に面と向かって、偉そうにああしろこうしろとは言いたくないけどね。


言ったって信用されないだろうし、反発されるだけなのは分かるから。他でもない僕自身が、そんな風に言われても素直に聞けないから。


それに、他人の事情というのは、良く見えない部分も多いと思う。


鷲崎さんと結人くんの場合は、鷲崎さんが僕を頼ってくれて、僕の話に耳を傾けてくれて、自分の事情とか思ってることとか困ってることを打ち明けてくれて、ほとんど毎日のように一緒に食事をして、その表情や仕草をちゃんと見せてくれてるから、


『こうしてみたらどうかな』


って形でただ僕の考えを提示させてもらってるだけなんだ。それで鷲崎さん自身が、自分の状況に具体的に効果があるかどうかを判断して取り入れるかどうかを決めてるんだ。


それは、僕が山仁やまひとさんを参考にした時のやり方でもある。


山仁さんは『ああしろこうしろ』とは言わなかった。あくまで『自分はこうしてる』って形で見せてくれるだけだった。その中から、うちの状況に合いそうなものを僕自身の判断で取り入れるようにしてきたんだ。


ああしろこうしろと口出ししてくるのは、結局、その人のことを信用してないからだと思う。


子供にあれこれ口煩く言ったり、先回りして親の方がやってしまう『過干渉』と同じものなんじゃないかな。



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