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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百二十二 結人編 「何を根拠にそう思うの?」

九月三十日。日曜日。台風が近付いてるということで警戒して、今日はアパートで大人しくしておく。でも、ぜんぜんそんな感じがしない。だけどこれは、『嵐の前の静けさ』ってことなんだろうか。




昨日の旅館での田上たのうえさんの誕生日パーティーも楽しかった。沙奈子も楽しめたと思う。


女の子たちはみんなで一緒にお風呂にも入った。僕はもちろん入らなかったけど、大希ひろきくんはしっかり一緒に入ってた。絵里奈や玲那にとってはぜんぜん気になるような相手じゃないのは当然でも、沙奈子も、もう六年生になって半年が経とうとしてるのにまったく気にしてた様子がない。一時期、僕と一緒にお風呂に入る時に少しだけ恥ずかしそうにしてたのが嘘みたいだ。自分の体の変化にもすっかり慣れてしまったらしい。


「先輩が平然としてるからでしょうね。だから自分の体の変化を、何か恥じなきゃいけないものだっていう認識が定着しなかったって感じかも」


とは、鷲崎わしざきさんの弁。


それに加えて、


「私も、先輩になら見られても平気かも。先輩って、不思議とそういう『いやらしさ』を感じさせないんですよ」


だって。それは、絵里奈や玲那からも言われたな。まあ、実際、僕はいまだに絵里奈以外の女性をそういう目で見ることができないっていうのはあるし。


絵里奈のことは女性として見られて、そういう気持ちにもなれて、結婚までしたのに、


『もしかしてこれで沙奈子のこともそういう目で見てしまったりするようになったらどうしよう……』


なんて心配までしたのに、実際にはぜんぜんそんなこともなかった。人間は、経験を積んだり時間の経過で変わっていくこともあるのは事実だけど、だからって簡単にまるっきり変わってしまうっていうのも難しいんだなって実感した。


将来にわたってそうだという確証はなくても、少なくとも今はそういうのがなくて、しかもそれで困るどころかおかげで『浮気』とか『不倫』とかに発展する可能性がほとんどないっていう意味で、僕にとってはメリットしかない。


それを思えば、大希くんが女の子と一緒にお風呂に入ることをまるで気にしないというのも、それで今すぐ何か問題があるかといえば、別にない気がする。僕だって絵里奈のことはちゃんと女性として見られてるし、『そういう気持ち』にだってなる。だから、特定の、お互いに認めた相手同士でそうなれるのなら、何も問題ないと思うんだ。


『そんなんで楽しいのか?』って言う人がいたとしても、逆に、


『そんなんで楽しくないって、何を根拠にそう思うの?』


って感じかな。何を楽しいと思うのは人それぞれなんだから。



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