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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百十六 結人編 「ある意味では『照れ隠し』みたいな」

九月二十三日。日曜日。今日も降ったりやんだりの不安定な天気だった。だから基本的には家でゆっくりしようと思う。


朝食を済ませていつものように沙奈子と一緒に掃除とか洗濯とかして、少し寛いでたら、ビデオ通話に鷲崎わしざきさんも参加してきた。


「今から行って大丈夫ですか?」


午前の勉強をしに行っていいかっていうことだった。


「はい、大丈夫ですよ」


僕がそう応えると、一分ほどで、


「お邪魔します♡」


と、結人ゆうとくんを連れた鷲崎さんが。


「……」


ニコニコ笑顔の鷲崎さんに対して、ムスッと不機嫌そうな表情の結人くん。普段と変わらない様子に安心する。だって、鷲崎さんの結人くんへの接し方が以前よりずっと柔らかくなってるのに結人くんの態度が変わらないのは、ある意味では彼がその変化を受け止められてるからっていう見方もできると思うんだ。


彼がもし、鷲崎さんの変化を強く拒んでたとすればもっとイライラした様子が見えても当然なのに、今の彼からはそんな気配が伝わってこない。不機嫌そうな表情をしてても本当に不機嫌な訳じゃないのが分かってしまう。


彼としては精一杯、反発してるつもりなんじゃないかな。でも実際には目立った変化がない。以前にも増してイライラしてる訳でも、何かを強く我慢してる様子でもない。


これも、普段から彼の様子をしっかり見てるから分かることだと思う。


『鷲崎さんの態度が変わってるのに結人くんの態度が変わっていない』


ことも分かるんだ。


それについて鷲崎さんは、


「結人の様子が全然変わった気がしないんですけど、大丈夫なんでしょうか……?」


と少し不安そうにしていたこともあった。そんな彼女に対して、


「僕はむしろ、変わってないことに安心してる。彼が鷲崎さんの変化を望んでなければ、もっとイライラしたり反発したりしてもおかしくないんじゃないかな。それがないということは、実質的には『変わってる』んだよ。変化がないことが変化って言うかさ」


「そうか…!。そんな風にも考えられますね!」


「うん。気を付けないといけないのは、彼がイライラしてないかどうかだと思う。イライラしてたり、攻撃的になってたとしたら、彼にとって良くないストレスがかかってるってことだと思うんだ。


でも前と変わらずにただ単に愛想が悪いっていうだけなら、それはある意味では『照れ隠し』みたいなものなのかもしれないよ。彼がもし、自分の正直な気持ちを表に出しても大丈夫だと思ってくれれば表情とかも変わってくるかもしれないけど、今はまだそこまで信用してもらえてないんだと思う。僕にも覚えがあるよ。それまでの不信感が強すぎて、どうしていいのか分からないんじゃないかな」



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