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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百九 結人編 「それなりの自尊心」

九月十六日。日曜日。少し晴れ間も覗いたけど、それ以外はやっぱりどんよりとした天気だった。ただ、なんだか昨夜から少し暑さが戻ってきた気がする。エアコンまでは必要なかったけど。


日本で大きな災害とかが起こっても、略奪や暴動が起きないっていうのでよく話題になるのは、僕も日本人として少し誇らしいと思う。それは、


『〇〇だからルールとか守らなくていい。っていう言い訳を良しとしない』


姿勢なんじゃないかな。


僕はそういう部分を大切にしたいと思うんだ。そしてそれは普段からの心掛けが大事だって。


例えば、家族でファミレスに行って、ドリンクバーやサラダバーを一人分だけ注文しておいて他の人も飲み食いするとかを子供の前でやるとか、


家族の前で当たり前みたいに野球賭博をするとか、賭け麻雀をするとか、


名誉棄損として訴えられもするようなことをネットに書き込むとか。


自分はそんなことをやってて、子供にはルールを守る『ちゃんとした人間』に育ってほしいなんて、ムシが良すぎるんじゃないかな。


なんて、沙奈子と結人ゆうとくんが一緒に勉強してるのを眺めながらぼんやりとそんなことを思ってたら、


「やほやっほ~っ♡。愛しの沙奈のところに千早ちはやちゃんが参りましたよ~♡」


とか声を上げながら、千早ちゃんと大希ひろきくんと星谷ひかりたにさんがきた。


すると結人くんが「チッ」と舌打ちする。確かに褒められた態度じゃないし、それに気付いた鷲崎わしざきさんも悲しそうな顔になって、彼に声を掛けようとしたけど、僕は敢えてそんな鷲崎さんに向かって首を横に振る。その意図を察して、彼女は何も言わずにいてくれた。


そんな僕と鷲崎さんを、星谷さんが見てる。


この対応は、みんなで話し合って決めたものだった。


『結人くんの心境の変化をみんなで注意深く見守る』


って。


プライベートでは鷲崎さんと僕が。


学校では沙奈子と千早ちゃんと大希くんが。


そして少し距離を置いて、山仁やまひとさんや星谷さんが。


さらに、普段はあまり接点のない、より第三者に近い視点で、イチコさんや波多野さんや田上たのうえさんが。


それぞれの視点で結人くんの様子を見守るんだ。


そんな中で、たまに近所でちらっと姿を見かけるだけのイチコさんや田上さんにはさすがに分からないみたいだけど、僕と星谷さんは確かに感じてたんだ。結人くんの『変化』を。


鷲崎さんもそれは感じながらも、どうしても母親的な視点で見てるから、ついつい口出ししたくなってしまうみたいだ。だけど、二人きりの時には少しくらいの『お説教』もいいけど、他人の目があるところでは、基本的にはあまりとやかく言わないようにって取り決めしてたんだ。


彼にだってそれなりの自尊心はあるだろうからね。



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