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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百八 結人編 「ルールを守る姿勢」

九月十五日。土曜日。やっぱり今日も天気は悪い。




絵里奈と玲那に会いに行く前に、すっかり習慣になった鷲崎わしざきさんと結人ゆうとくんも合わせた四人で昼食にした。沙奈子も、言わなくても当たり前みたいに四人分、用意してくれる。


しかも決して嫌々やってるんじゃないのは、作ってる時の様子で分かる。それが分かるのも、僕が手伝うためにすぐ傍にいるからだろうな。


彼女の手際は、それだけを見てたらとても小学校六年生のとは思えない気がする。それに比べたら僕なんて、『足元にも及ばない』って言うのさえ失礼になるんじゃないかっていうくらいだ。


結人ゆうとくんは相変わらず愛想が悪いけど、何度も言うように敢えてそれは気にしない。彼には彼のペースがある。それに、こうやって一緒に食事をしてくれるようになってくれただけでもすごい変化だ。ほとんど別人って言ってもいいくらいだと思う。


礼儀とか常識とかについても、敢えて急がない。今はまだそれをあれこれ言える段階じゃないって思ってる。


とにかく僕は、『ちゃんとしろ』『努力しろ』とは言わないつもりだ。結人くんにだけじゃなく、沙奈子に対しても言ってない。『ちゃんとした方がいいかな』『努力した方がいいかな』とは言うかもしれなくても。


何度だって言うけど、他でもない僕自身が、ちゃんとできてないし、そんなに自慢できるほど努力もしてないと思うから。何度も言うのは、そういう自分を棚に上げてしまわないするため。ちゃんとしてない大人に『ちゃんとしろ』って言われるのがどれほど精神にとって『毒』になるかを、僕は知ってる。間近で見てきた。


だからこそ、『こうした方がいい』と思うことがあるんなら、まずは自分がやってみせるように心掛けたい。そうしてる僕の姿を見て、沙奈子も真似してもらえたらそれでいいと思ってる。偉そうに命令しても、聞いてもらえるほど立派な人間じゃないし。


逆に言えば、親がぜんぜん立派でなくても、人としてこうした方がいいっていうのを実際にやってみせてたら、子供だって真似しやすいんじゃないかな。


だから僕は、交通ルールとかも守るようにしてるんだ。


『別に車も来てないなら律儀に信号守る必要ないじゃん』と言うんじゃなくて、『ルールを守る姿勢』というのを沙奈子に真似して欲しいから、自分がお手本になるんだ。


それは、結人くんに対してもそうだ。今はまだ反発してても、子供が反発してるからって大人が手本を示さなくていいって訳じゃないと思う。


と言うか、子供が反発してることを言い訳に大人としての節度を守らなくていいなんてのは、ただの甘えなんだろうな。



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