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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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八百 結人編 「ただ安心するのではなく」

九月五日。水曜日。昨日の台風では、思った以上の被害が出ていたみたいだった。会社から帰る時は気が付かなかったけど、今朝、自転車で通勤していたら、電柱が一本、完全に折れているのがあった。こんな光景、僕はニュース映像でしか見たことがなかった気がする。


それ以外にも、割と新しそうなアパートの屋根が飛ばされたり、屋台が完全に潰れていたりという光景もあった。アパートのすぐ近所でも、駐車場の屋根がなくなってたり、店の庇が崩れ落ちたりもしてた。


今住んでいる辺りは災害に強い場所だと思ってたんだけどな。いや、『災害に強い場所だからこの程度で済んだ』というのもあるのかもしれない。なにしろ、他県では、何万世帯も停電してるところもあるって聞くし。


目隠し用のサンシェードが飛ばされたくらいで済んだのは、本当に幸運だったんだろうな。帰ってから秋嶋あきしまさんにお詫びしに行った。


「いえいえ、そのくらい、大丈夫です!」


って逆に恐縮されてしまった。前もって玲那からも謝っておいてくれたからっていうのもあると思う。


その一方で、停電と言えば、イチコさんたちの学校も停電してしまって、今日は生徒は自宅待機ってことになったらしい。


沙奈子の学校は大きな被害がなくて、朝からちゃんと行けたけど。




「今回の台風はマジヤバかったね!」


今日は定時で終われたから自転車をアパートに置いてから沙奈子を迎えに山仁さんの家に行くと、波多野さんが興奮した感じでそう言った。


「ホント、マジヤバかった…! うちも隣の家のガレージの屋根が飛ばされてた!」


田上たのうえさんも。


ホント、人的被害がなかったのは不幸中の幸いって感じかな。


災害に強い地域だと思えても、油断しちゃいけないって改めて教えられた気がした。


星谷ひかりたにさんが言う。


「今回、大きな被害が出なかったとただ安心するのではなく、今後の防災対策に役立てていかないといけませんね」


その通りだと思った。無事だったのはたまたま運が良かっただけだって改めて思う。大きな被害が出てから、


『あの時、ああしておけばよかった』


って考えるんじゃなくて、気付いた時にやらなくちゃ。


大切なものを失ってから後悔したって遅いんだ。




アパートに帰る時、久しぶりに沙奈子と手を繋いで帰った。


沙奈子も、僕の手をしっかりと握ってくれた。六年生にもなったら恥ずかしがって手を繋いでくれない子も多いって聞くけど、この子は今でもちゃんと手を繋いでくれる。僕のことを信頼してくれてる。


その信頼に応えたいと、改めて思うんだ。



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