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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百九十九 結人編 「特別な一日」

「いえいえ、そんなことよりホントに気を付けて帰ってくださいね。無理しないで!」


今日の夕食は一緒できないと伝えた時、鷲崎わしざきさんはそう言って逆に僕を気遣ってくれた。それで、どうやら今はまだアパートは無事なんだって分かった。


ただ―――――。


「ただ、先輩とこのベランダのサンシェードが……」


「…え?」


鷲崎さんの話だと、僕の部屋のベランダに設置した目隠し用のサンシェードが、一部飛ばされてしまったらしい。それが秋嶋あきしまさんの部屋のベランダに引っかかってて、秋嶋さんが回収してくれたって話を、喜緑きみどりさんから聞いて、それを今、僕に伝えてくれてるってことだった。


それ以外にも、アパートの二階廊下の柵に付けてあった不動産会社の広告が飛ばされたり、雨どいの一部が壊れたりしたらしいけど、それ以外には大きな被害はなかったって。


サンシェードのことは秋嶋さんに迷惑を掛けてしまったなって思った。それは後でお詫びしないといけないとは思いつつ、大きな被害がなかったというのは本当にホッとした。


どうやら、アパートの裏に建ってるトランクルームの建物が上手い具合に、突風が吹いた時の風よけになってくれてたらしい。それがなかったらもっと大きな被害が出てたかもって、後で聞いた。


結局、八時くらいまで会社に残って残業しつつ様子を見て、雨も風もかなり収まったということで、帰ることになった。


慎重に電動アシスト自転車を運転してアパートに向かう。


さすがに暗くてよく分からないけど、結構、道とかにもいろんなものが落ちてたりして、いつもとは様子が違うのは感じられた。


『やっぱり、相当すごかったんだな……』


そんなことを思いつつ、沙奈子を迎えにまずは山仁やまひとさんの家に向かう。


パッと見には被害はなさそうで、ホッとする。


チャイムを押すと、


「は~い!」


っていういつもの元気な声が。その声の調子からも、何かあった様子は感じられなかった。迎えに出てくれた千早ちはやちゃん、大希ひろきくん、沙奈子の表情も、いつも通り、


……いや、少しだけ興奮した感じだったのかな。


「台風、すごかったね!」


「ちょっと怖かった。でもピカちゃんたちがいてくれたから大丈夫だったよ!」


千早ちゃんと大希くんが声を上げる。そんな二人の横で、沙奈子もいつもより顔が赤くなってる気がする。たぶん、興奮してるんだ。無事なその姿にホッと胸を撫で下ろしつつも、やっぱり特別な一日だったんだって思ったのだった。



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