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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百九十三 結人編 「大変さの種類」

八月三十一日。金曜日。今日は朝から不安定な天気だった。遠くで雷が鳴ってたりしたし。だから念の為、バスで行くことにした。すると皮肉なことに、会社に着くまでは大丈夫だったのに、着いて仕事を始めた途端、ごーって感じで雨が降り始めた。


まあでも、もし自転車で走ってる時にこの感じで降られていたら大変だったし、それが回避できたということで良しとしよう。


と思ったらかーっと太陽が照ったりと、本当に不安定な天気だ。


で、曇ったり晴れたりを繰り返したかと思うと、山仁やまひとさんのところに集まってた時にまたどーって降り出して、そのまま少し待たせてもらってから、やんだ隙に沙奈子と一緒にアパートへと帰った。




それはさておき、取り敢えずここまで勤めてみて、たぶん、大丈夫かなという感触は掴んでた。職場の人達のお節介もそんなに気になるほどじゃなさそうだ。仕事中は当然、仕事に集中してくれてるし。


ただ、昼休憩とかには、僕が沙奈子の『父親』ということで、彼女が作ってる人形のドレスについての質問攻めにあったりはするけど。


まあでもそれも、僕があまり気にしないようにして最低限の受け答えだけに徹すれば何とかなりそうだ。


これも、前の会社で絵里奈と玲那が昼休憩に僕に話しかけてきた時の経験が役に立ってる感じかな。もしそれがなかったら、相当、神経をすり減らしてたかもしれない。


周囲が何もかも自分に合わせてくれるのを期待するよりも、自分が周囲と折り合うようにすることの方がよっぱど確実でいい結果を生むことも、僕はこれまで学んできた。


もちろん、だからって何もかも周囲に合わせることはできないから、『自分が折り合いを付けられる環境』を選ぶ必要もあるとは思うけどさ。


とは言え、何もかもを期待するよりは確実に選択の範囲は広がるんじゃないかな。


そうでないと、僕は、この新しい職場さえ、受け入れることができてなかったと思う。そうして次々と仕事を変えることになってたかもしれない。


『仕事』っていうのは、どんな仕事でも、あくまで『大変さの種類』が違うだけで、大変なのは変わらないと思うんだ。それ以上に影響するのは、職場の人間関係なんだろうなっていう実感が今はある。どんなにいい仕事でも、職場での人間関係に恵まれなかったら続けるのは大変だろうから。


そういう意味でも、今の職場は十分に『我慢』できるところじゃないかな。もし何かあった時には、鷲崎わしざきさんに相談したらいいんじゃないかとも思うし。



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