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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百八十八 結人編 「思い切って」

八月二十六日。日曜日。


いよいよ明日から、新しい職場だ。在宅勤務も有りとは言ってくれてるけど、当面は、仕事の段取りとかを学ぶ為に出勤することになる。


方向が若干違うだけで距離的には前の会社とそんなに変わらないけど、バスの路線が変わるからバス停まで少し遠くなってしまうのは慣れるまでちょっと大変かもしれない。


と言うか、いっそ、玲那みたいに自転車通勤しようか。電動アシスト自転車なら、そんなに大変じゃないかもしれない。


「いいと思います。今ならまだ多少の余裕もあるし、思い切ってそうすればいいんじゃないですか?。定期代のことを考えれば数年でペイできますよ」


「買っちゃえ買っちゃえ♡」


絵里奈と玲那もそう言ってくれたし、


「沙奈子、電動アシスト自転車買っていいかな?」


と尋ねたら、沙奈子も「うん」って了承してくれた。だから、掃除と洗濯が終わって沙奈子の午前の勉強を始めるまでの間にいつもの大型スーパーに行って、そこの自転車売り場で、電動アシスト自転車を買わせてもらった。


これまで使ってた自転車は引き取ってもらうことにする。まだ十分に使えるけど、自転車置き場のスペースのことも考えると迷惑になるから。


だけど、


「充電とカゴを付けるのに一時間ほどいただきます」


と言われて、いったんアパートに帰って午前の勉強を済ませて、それからまた自転車を取りに行った。


「お父さんだけ電動アシストにしてごめんな」


スーパーからの帰り、信号待ちになった時に、真新しい自転車に乗って僕の隣に止まった沙奈子に詫びると、


「大丈夫。お父さんのはお仕事のだから」


って少し嬉しそうな表情で僕を見上げながら言ってくれた。


本当にいい子だなあ。


と、沙奈子も真新しい自転車に乗っているのは、さすがに前のが小さくなってきたように思えたから、この際ということで、沙奈子のも新しく買い替えたんだ。


子供用の電動アシスト自転車ってのはないみたいだし、あったとしてもさすがに二台も買うのは無理があったから沙奈子のは普通の『軽快車』ってやつだけど、ちょうど水色の可愛いのがあったから、絵里奈と玲那にも電話で相談した上で買わせてもらった。


沙奈子が嬉しそうな表情をしてたのは、自分の自転車も新しくなったからかもしれない。


思い切って買って良かった。


ところで、電動アシスト自転車だと少し扱ぐだけですいすい前に進むから、沙奈子とペースを合わせるためには、あまり扱がないようにしないといけないんだな。


なんてことに感心しながら、僕たちはアパートへ帰ったのだった。



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