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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百八十五 結人編 「少しくらいは信用しても」

八月二十三日。木曜日。何やら台風が近付いてるらしく、朝から天気が不安定だった。雨が降ってたと思ったら日が照って、また曇って、雨が降ってって調子で。


だから家で大人しくしておく。


夕方、山仁さんの家には行くつもりだけど、あまり雨風が強いようならそれも今日は休むことになるかな。




今日も、昼食も夕食も一緒に食べる。僕と沙奈子と、ビデオ通話を通じて絵里奈と玲那と、鷲崎わしざきさんと結人ゆうとくんと。


相変わらず愛想は悪いけど、結人くんもすっかりこうするのが当たり前になったみたいだ。


だけどそれ以上に、結人くんを見る鷲崎さんの表情が変わった気がする。なんて言うか、すっかり『お母さん』って感じがするんだ。


『私、あの子の『お母さん』になりたい』


彼女が言ったその言葉の通りに。


そんな鷲崎さんに結人くんが戸惑ってるのも感じるけど、でも少なくとも反抗的になってる気もしない。ただただどうしていいのか分からないっていう状態かな。


鷲崎さんが言う。


「絵里奈さんからもらった組み立て式のドール用の椅子、あの子、一日で完成させちゃいました。見せるのは嫌がったから披露するのは学校に提出するまでお預けですけど、すごく上手に作れたと思います。もしかしたらモノづくりの才能とかあるのかも。


そういうのも、私、今まで気付きませんでした。あの子のことを見てるようで見てなかった。


なんか、あの子が今まで荒れてた理由が分かっちゃった気もするんです。私がずっとそばにいたのに、あの子は独りぼっちだった。だから一人で戦うしかなかったんでしょうね。


でももうこれからは違います。私がそばにいます。あの子が辛い時には私が受け止めます。


もう、あの子を一人にはしません」


それを聞いた時、


『ああ、もう、これで大丈夫だな』


って思ってしまった。彼女がそれに気付いたんなら僕たちが変に気を回さなくても大丈夫だって思った。後はもう、見守るだけで大丈夫だって。


もちろん、完全に放っておいて大丈夫とまでは思わないから、『見守る』んだ。もし、何か僕たちの力が必要になった時にはすぐに助けられるように。


結人くんも少しずつ変わってきてる気がする。少なくとも毎日のように一緒に食事をしてもそんなに僕たちのことを警戒はしてない。『気を許してる』とまではとても言えなくても、攻撃的な雰囲気はない。そこまで敵意をむき出しにしなくても大丈夫だっていうのは感じてくれてるんじゃないかな。


だけど焦らない。急がない。油断しない。これから先もゆっくりじっくり待つ。


彼が僕たちのことを少しくらいは信用しても大丈夫だって思ってくれるまでね。



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