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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百八十四 結人編 「直感的に見抜いて」

八月二十二日。水曜日。


今日も、鷲崎わしざきさんと結人ゆうとくんも一緒に昼食や夕食を食べた。


それで気が付いたんだ。結人くんを見る鷲崎さんの目が、以前よりもさらに優しいものになってるって。


昼食の後、いつものように結人くんが散歩に出ていない時に、ビデオ通話で鷲崎さんは言った。


「日曜日に沙奈子ちゃんに抱き締めてもらって気が付いたんです。私、結人のことを受け止めてるつもりで、受け止め切れてなかったって。家族になったつもりで、でもぜんぜん家族になれてなかった…。


たぶん、怖かったんです。本当に家族みたいになれた後で別れる日がくるのが……。


もし、結人の本当のお母さんがあの子を迎えに来たら、心を入れ替えることができてたら、あの子を返さなくちゃいけなかったから。


せっかく本当の家族みたいになれてもそんな風に別れることになるかもと思ったら、怖かったんです。


でも、家族って本当はそうじゃないですよね。もし離れて暮らすことになっても、家族は家族なんですよね。


沙奈子ちゃんに抱き締められた時、なんかそれが分かっちゃった気がして。


だから私、これからはもっともっとちゃんとあの子を受け止めたいと思います。


私、あの子の『お母さん』になりたい」


って。真っ直ぐに僕たちを見詰めながら。


その決意が眩しくて、僕はつい目を細めてしまってた気がする。


鷲崎さんは本当に素敵な女性だ。彼女が幸せになれない世の中なんて何の値打ちもない気がしてしまう。


そしたら、鷲崎さんがビデオ通話を終了させた後で、玲那が言った。


「ふっふっふ。とっくんが白状しましたぞ。やはり織姫のことが気になってると申しておりました。あやつめ、この前の日曜日、なんでそんなことになったのかはよく分からないけど結人くんがトイレを占拠してしまって追い詰められた織姫がとっくんの部屋のトイレを借りにきて、それで本格的に気になりだしたようですな」


トイレを…?、本当になんでそんなことになったのかは意味不明だけど、そんなきっかけでも親しくなれるならそれでいいのかもしれないな。


玲那が続ける。


「とっくんもあっきーたちも、本当は根っからの<ロリコン>じゃないんだって改めて実感したよ。ただ、同年代以上の女性とうまく付き合えなかっただけなんだ。だから私も、あっきーたちと友達になれたんだ。


でなきゃ、さすがに、ね」


そうか…。そうだよな。玲那は十歳の頃からたくさんひどい目に遭ってきたんだもんな。小さい女の子を本気でそういう目で見るような人のことは今でも怖いんだもんな。それで沙奈子のファンだって言ってた秋嶋さんたちと友達になれるんだから、直感的に見抜いてたってことなのかもしれないな。



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