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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百八十一 結人編 「そっと包み込むように」

八月十九日。日曜日。なんだか昨日あたりからいきなり涼しくなった気がする。台風が次々接近してるらしいから、その影響もあるんだろうか。


でもまあ、暑さがマシになってくれたのならそれでいい。今までが異常だったんだと思う。


もっとも、また暑さがぶり返したりってことがあるかもしれないから油断はできないか。




それはさて置いて、今日も、結人ゆうとくんはうちで勉強をしてる。夏休みの宿題もほとんど終わった。あとは自由課題だけか。


沙奈子はもちろん、人形用のドレスだった。それも今年は、小さい方の人形のそれじゃなくて、大きい方の人形用のドレス三着だった。売り物としては納得のいく出来じゃなかったものを少し手直しして、自由課題ということにしたんだ。


お昼にはいつものように千早ちはやちゃんたちが来て賑やかだったからそれどころじゃなかったみたいだけど、夕方、またうちに来た時、机の上に並べられたそのドレスを見て、鷲崎わしざきさんが声を上げた。


「うわ~、うわ~、すごい!、これ全部、沙奈子ちゃんが作ったんですか!?」


子供みたいに素直に驚く様子に、沙奈子もまんざらでもない表情かおをしてたと思う。


「ショック~、料理だけでなく裁縫でまで完敗だ~…」


とまで言ってくれるけど、僕も、


「でも、織姫さんのイラストもすごいじゃないですか。以前に見せてもらったイラスト、沙奈子も驚いてましたよ」


って返させてもらった。


そうなんだ。自分のノートパソコンで仕事をしてた彼女のイラストを見せてもらった沙奈子が、「ふわあ!」って表情をしてるのを、僕は見逃さなかった。


沙奈子も、ドレスのデッサンとかで絵を描くけど、やっぱり鷲崎さんのイラストに比べればまだまだ拙いのも事実だった。もちろんドレスのイメージを掴むためのデッサンと、絵として完成させられたイラストを比べるのが間違ってるのも分かってる。だけどそれでも力の違いは歴然としてると思うんだ。


だから結局、それぞれ得意なことは違うっていうことでもあると思うし、それでいいんじゃないかな。


沙奈子も、大きく頷いてくれた。


すると、鷲崎さんは、


「ありがとう、沙奈子ちゃん、嬉しいよ~」


って、涙をぽろぽろと。


どうして急に泣き出してしまったのか、その理由も何となく察してた。と言うのも、鷲崎さんはちょっと大変な仕事を抱えててそれがようやく終えられて、ホッとしてたところもあったからって気がする。


とその時、泣いてる鷲崎さんに沙奈子がすっと近付いていって、彼女をそっと包み込むように抱き締めたんだ。



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