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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百七十八 結人編 「そちらに通うことに」

八月十四日。火曜日。何やら台風が近付いてるせいなのか、天気が微妙に不安定だった。その分、暑さはマシになってるみたいだけど。




まあそれはさておき、昨夜の、


『私の会社で工業デザイン系のCADの経験者を募集してるんですけど、もしよかったら山下さん、どうですか?』


という鷲崎わしざきさんの提案は、僕にとっては『渡りに船』だった。


なにしろ、今、僕は、会社内でいわゆる『飼い殺し』状態になってたから。


玲那の事件を受けて、彼女と親しくしてた絵里奈と僕も、会社は退職に追い込もうといろいろ圧力を掛けてきたんだ。絵里奈はそれに耐えきれなくなって退職したけど、僕はそのやり方には納得できなくて、持ち前のスルースキルを発揮して、一切、上司のパワハラ発言とかも聞き流すようにしてた。


だけど、残業を一切させてもらえなくなったことで給料が激減。生活を切り詰めないといけなくなったのも事実だった。


でも、絵里奈が始めたフリマサイトでの人形の服の販売が順調で、特に沙奈子の作るドレスが評判を呼んで、事件の影響で再就職できなかった玲那の『仕事』にできて、生活の心配はあまりしなくてよくなってた。


だから僕も無理に今の会社に残る必要はなくなってたし、絵里奈も、


「あまり無理しないでくださいね?。しばらくなら私の貯えの方で何とかなりますから」


と言ってくれてたんだけど、僕はそれ以上に会社のやり方に納得がいってなかったから、抗議の意味も込めて敢えて残ってたんだ。


けれどそれももう一年半以上になって、ある意味では惰性で続けてるような状態になってたのも正直なところだと思う。


そこに、鷲崎さんの申し出。


「詳しい条件を聞いてもいいかな」


僕はそう鷲崎さんに聞き返してた。


しかもそれに喜んでくれたのは、絵里奈と玲那だった。


いたるさん!、これはチャンスですよ!」


「そうだよお父さん!、織姫が行ってる会社なら間違いないよ!。いっちゃえいっちゃえ!!」


だって。


それに後押しされるように、電話でだけど鷲崎さんの会社の担当の人と話をして、来週、僕が夏休みに入った時に面接することになった。


と言うか、実際にはその時点で入社の手続きをするっていう流れに。


「彼女の紹介なら間違いないでしょう」


って、担当の人も。その様子に、鷲崎さんがどれだけ信頼されてるかっていうのも分かった気がした。


その会社は、決してそんなに大きな会社じゃないし、残業代を含めても、今の会社での今の収入より劇的に増える訳じゃないけど、でもすごく働きやすそうな会社だとは感じたんだ。


そして結果から言えば、今月の下旬から早速、そちらに通うことになったのだった。





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