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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百七十四 結人編 「自分で自分を縛ってる」

八月十二日。日曜日。


昨日から始まった、沙奈子と結人ゆうとくんの勉強は、僕が想像してた以上に順調だった。二人して静かに黙々と、沙奈子は自主勉強、結人くんは夏休みの宿題を進めていく。


沙奈子はいつものことだから何にも心配してないけど、結人くんはもっとこう、集中できなくてそわそわした感じになるんじゃないかと思ってた。なのに、実際には、すごく集中してやってたと思う。


たぶん、気を逸らすようなことが何もないからなんじゃないかな。


おしゃべりするような相手もいないし、遊ぶ相手もいない。一緒にいる沙奈子は勉強に集中してるし、それに対抗心を燃やしてるというのもあるかもしれない。


でもいずれにせよ、真面目にやってくれてるのなら口出しする必要も感じなかった。


そんな二人の様子を、僕はネットで調べ物をしながら、鷲崎わしざきさんは持ってきた自分のパソコンで仕事をしながら黙って見守る。勉強の邪魔をしないように、僕たちもおしゃべりとかしない。


ただ、鷲崎さんは、真面目に宿題をしてる結人くんの姿に驚いた様子だった。最初のうちは、『信じられない!』って顔で僕の方を何度も見たりしてきた。


『沙奈子と一緒に勉強したらどうかな?』って言った時には、まずは、


「え?、でもそれじゃ沙奈子ちゃんの迷惑になりませんか?。絶対、勉強の邪魔になりますよ」


って言ったくらいに、普段の結人くんの様子を見て『まともに勉強とかするはずない』って思ってたらしい。


だけどそれは、僕が思うに、鷲崎さんに甘えたかっただけじゃないかな。悪態を吐いたり生意気なことを言ったり言うことを聞かないのは、甘えたいからだっていう気がする。そうやって鷲崎さんが自分をどう思ってるのかを確かめようとしてるんじゃないかな。本人は決して認めないだろうけど。


これも、僕は沙奈子で経験済みだ。この子の場合はただ黙って自分からは何も言わなくて、僕の方から気を遣ってくれることをただ待ってた感じかな。それも要するに、僕という人間が自分にとってどういう存在になるのかを確かめようとしてたんだと思うんだ。


だから僕は、結人くんに対して「甘えるな」とは、よっぽどのことがない限り言えないし、言うつもりもないんだ。


けれど僕がわざわざそう言わなくても、ここだと、結人くんはいつもみたいには鷲崎さんに甘えられない。僕や沙奈子の目があるからね。


彼は、大人をはじめとした他人を信用してない。弱みを見せるとすぐに付け込まれると考えてるんだろうな。それは僕にも覚えのある感覚。


結人くんも、そうやって自分で自分を縛ってるんじゃないかな。



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