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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百七十三 結人編 「一緒に勉強」

八月九日。木曜日。


玲那を見捨てられない僕が、鷲崎わしざきさんを放っておけるわけがない。


僕とはまったく合わない人だったらそもそも関わろうと思わないし。


こうやって関わることを避けようとしてない時点で、僕にはもう放っておけない人なんだ。


そしてそれは、結人ゆうとくんについてもね。




八月十日。金曜日。


少しマシになったかなと思ってたけど、やっぱり暑い。


だけどそれも含めていつも通りの一日だった。


と思ったけど、沙奈子がカレーにするというのでふと考えてしまった。


『今日も、夕食に誘ってみたらどうかな』


だから電話してみたんだ。


「今夜はカレーなんだけど、一緒にどう?」


って。




八月十一日。土曜日。


昨日、鷲崎わしざきさんと結人ゆうとくんを夕食に誘ってみた。これは、僕が最近感じてたのを確かめるためでもあった。


結人くんについて感じてたことをね。


すると不機嫌そうな顔をしながらも大人しく一緒に来て、夕食を食べていった。その姿にも、諦めにも似た『慣れ』が見て取れた気がした。結人くん自身が、僕たちを、『受け入れた』とまでは言わないにしても、こうして関わり合いになることについて強く拒絶してない印象があった。


だから僕は提案してみたんだ。


「もしよかったら、沙奈子と一緒に勉強したらどうかな?」


もちろんそれは、結人くんに直接じゃなく、結人くんに勉強させたいと思っている鷲崎さんへの提案という形でね。


そうすれば、結人くん自身も、


『言われたから仕方なく』


っていう形で自分に言い聞かせることができると思ったんだ。


そしてそれは、どうやら上手くハマったらしい。


「おはようございます」


と元気よく挨拶してくれる鷲崎さんに連れられて、結人くんは大人しく勉強をしに来てくれた。と言っても、夏休みの宿題をするだけなんだけどさ。


「助かります。結人ってばいっつも夏休みの終わりのぎりぎりになってパパッと適当に済ませちゃって、どうしようか思案してたんです」


というのは、鷲崎さんの弁。よくある悩みってことかな。


沙奈子はいつもさっさと片付けてしまう方だから、それで困った経験は僕にはない。だからこそ、沙奈子と一緒にと思ったんだ。


「まあ…、いいけどよ」


彼は、僕の前でも不機嫌そうに不遜な態度は崩さなかった。


でも僕はこの時、小躍りしたいくらい上手くいったと感じてた。まさか彼がこんな風に言ってくれるとは思ってなかったんだ。もっとこう、悪態を吐いて本当に嫌々、渋々従ってるっていう風になるんじゃないかと予想してんだ。



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