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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百七十一 結人編 「やっぱり申し訳ないなって」

八月七日。火曜日。今日は何だか暑さが随分とマシになってきた気がする。それでも、これで普通の夏の暑さんだろうな。今までが暑すぎたんだ。




一緒に海に行って、水着姿の彼女を見て、腕に抱きつかれたりして改めて実感した。


鷲崎わしざきさんはとても素敵な女性だけど、僕にとっては絵里奈以上にはなれないって。絵里奈に対しては感じるものが、彼女に対しては感じないんだ。


僕にとってパートナーになれるのは、やっぱり絵里奈なんだな。


もしかしたら、単に、僕と沙奈子にとって大変な時に絵里奈が支えてくれたから、そういう意味で評価に補正が掛かってる可能性だってないとは言えなくても、そういうことも含めて僕にとっては絵里奈なんだ。


海から帰ってすぐ、絵里奈にすべて包み隠さず報告した。ナンパを追い払う為に『連れアピール』したことも、彼女に抱きつかれたことも、ね。


だけど絵里奈は、


いたるさんは平気ですもんね♡」


と笑ってくれた。


「私も、いたるさん以外の男性に対してはそういう目で見ることが今でもできないんです。いたるさんも私と同じだって分かるから、何も心配してません。


それに、私は元々、あなたに親しい女性がいるとかいないとかでヤキモチを妬けるような立場じゃないですから」


なんて言いながら玲那と顔を見合わせて苦笑いする。


そうなんだ。僕はそもそも絵里奈と玲那の関係の間に割り込んだ形で、今も、玲那が抱えているものの所為で不安定になりそうなのを絵里奈との関係で持ちこたえてる状態だった。


だけど世間的に見れば絵里奈がある意味では『浮気』をしてるとも取れなくもない訳で、そのことについて引け目を感じてるっているのもあるんだって。


いたるさんは、私と玲那の関係を『必要なこと』として認めてくれてますけど、やっぱり申し訳ないなっていうのもあるんですよ」


って、困ったように笑う。でも僕は、そんな彼女も可愛いと思う。


「申し訳ないなって思ってくれてるだけで十分だよ。これで平然と開き直られると僕もちょっと残念な気持ちになるかもだけどさ。けど、絵里奈はそうじゃないからね」


他人には僕たちのこういう感覚は理解できなくても、別に他人に理解してもらう必要もないし。あくまで僕たちの問題だから。


世の中には自分が理解できないことを『悪』のように断罪しようとする人もいるけど、僕に言わせればそういう人の方がむしろ『悪』のような気がしてしまう。僕は決して、他人に僕たちと同じようにしろって押し付けたいわけじゃないんだ。僕たちのようになるのが正しいと思ってるわけでもない。僕たちにとってはたまたま今のこの関係性が、精神的なバランスを保つためには必要だっていうだけでさ。



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